先進医療認定制度は、厚生労働大臣が定めた高度な医療技術を用いた特定の治療法について、保険診療との併用を可能にする重要な制度です。この制度は、新しい医療技術を患者に提供しながら、その安全性と有効性を継続的に評価するためのものです。
先進医療は、特定の大学病院などで研究・開発された難病などの新しい治療や手術などが、ある程度実績を積んで確立されると、厚生労働省に「先進医療」として認められます。現在、先進医療は評価療養の一つとして位置づけられており、公的医療保険の対象ではないものの、一定の評価は受けているため保険診療との併用が認められています。
医療機関が先進医療を実施するには、それぞれの医療技術について厚生労働省から「医療技術の認定」と「実施機関としての認定」の2つの認定を受ける必要があります。これらの認定は医療技術の種類ごとに決められているため、ある技術で認定を受けている医療機関でも、別の技術については認定を受けていない場合があります。
医療機関から申請された個別の医療技術が先進医療として認められるためには、先進医療会議で安全性、有効性等の審査を受ける必要があり、実施する医療機関は厚生労働大臣への届出又は承認が必要となります。
申請から先進医療として承認されるまでの期間は概ね6ヶ月が必要ですが、評価の迅速化・効率化を図る目的で「最先端医療迅速評価制度」や「国家戦略特区における保険外併用療養の特例」が創設されました。これらの制度を使用することで、申請後から先進医療の実施まで概ね3ヶ月で可能となる場合があります。
審査においては、以下の要素が重点的に評価されます。
先進医療を実施できる医療機関は、厚生労働省が限定しており、厚生労働大臣が定めた施設基準に該当する医療機関のみ実施することができます。実施機関としての認定は、医療技術の種類ごとに決められているため、包括的な認定ではなく、個別の技術ごとに要件を満たす必要があります。
医療機関に求められる具体的な要件には以下があります。
当該技術を実施可能とする医療機関の要件は技術ごとに詳細に定められており、専門性と安全性を確保するための厳格な基準が設けられています。
先進医療は、使用する医薬品・医療機器の承認状況などによって「先進医療A」と「先進医療B」に分類されています。
先進医療A。
先進医療B。
2025年7月1日現在、先進医療Aとして27種類、2,513件の技術が実施されています。技術の内容は時とともに変化し、評価の結果、公的医療保険の対象となったり、対象から外れたりします。
代表的な先進医療技術として、がん治療における陽子線治療や重粒子線治療などが注目されており、これらの技術は高額な治療費がかかることでも知られています。
先進医療の技術料は公的医療保険の対象外で、全額自己負担になります。しかし、その他の診察料、検査料、投薬料、入院料などは公的医療保険が適用されるため、従来の混合診療の禁止原則の例外として、保険診療との併用が認められています。
費用負担の特徴。
厚生労働省に届け出た医療機関以外で先進医療と同様の治療・手術などを受けても先進医療とは認められず、全てが公的医療保険の対象外となり、診察料を含め全額自己負担となるため注意が必要です。
先進医療認定制度は、日本の医療技術革新を促進する重要な仕組みとして機能していますが、いくつかの課題も指摘されています。
制度の利点。
今後の課題。
先進医療制度は、医療技術の進歩と患者の治療選択肢拡大を両立させる重要な制度として、今後も継続的な改善が期待されています。医療従事者は、この制度の仕組みを正確に理解し、患者に適切な情報提供を行うことが求められています。
厚生労働省の先進医療の概要に関する詳細情報。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/sensiniryo/index.html
先進医療を実施している医療機関の最新リスト。
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/kikan02.html