ダルテパリンとヘパリンの違いを徹底解説!血液凝固阻止効果を比較

ダルテパリンとヘパリンの分子量や作用機序にはどのような違いがあるのでしょうか?透析治療や血栓予防における使い分けのポイントを詳しく解説します。医療従事者が知っておくべき両者の特徴と副作用の違いについて具体的に解説していきます。

ダルテパリンとヘパリンの違い

ダルテパリンとヘパリンの主要な違い
🧬
分子量の違い

ダルテパリンは平均分子量約5,000、ヘパリンは12,000~15,000

作用機序の特徴

ダルテパリンは主に抗Xa因子活性、ヘパリンは抗トロンビン作用も併有

作用時間の違い

ダルテパリンは半減期2時間、ヘパリンは30-90分で作用持続時間が異なる

ダルテパリンの分子量と血液凝固阻止メカニズム

ダルテパリンは低分子量ヘパリン(LMWH)の一種で、平均分子量が約5,000です。これに対して未分画ヘパリンの平均分子量は12,000~15,000であり、明確な分子量の違いがあります。
参考)https://med.kissei.co.jp/dst01/pdf/di_fr.pdf

 

この分子量の違いが、血液凝固阻止メカニズムに重要な影響を与えます。ダルテパリンの抗凝固作用は、アンチトロンビンⅢとの相互作用が主な作用機序です。特に重要なのは、分子量約5,000を境として、ヘパリンの各種凝固因子に対する阻害作用が大きく異なることです。
分子量と作用の関係

  • 抗第Xa因子作用:分子量5,000程度で十分に発揮
  • 抗第Ⅱa(トロンビン)因子作用:分子量5,000以上が必要

そのため、ダルテパリンは抗第Xa因子活性が従来のヘパリンと同等でありながら、出血との相関性が示唆される活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)延長作用(抗トロンビン作用と高い相関性)は弱いという特徴があります。

ダルテパリンとヘパリンの作用機序比較

未分画ヘパリンがアンチトロンビンを介してトロンビン(IIa)を阻害する際には、アンチトロンビンとトロンビン双方に結合する必要があります。一方、第Xa因子を阻害するためには、アンチトロンビンに結合するのみで十分です。
参考)https://jspc.gr.jp/Contents/public/pdf/shi-guide07_08.pdf

 

低分子ヘパリンであるダルテパリンは、糖鎖が短いためトロンビンと結合できず、主に第Xa因子のみを阻害します。この作用機序の違いにより、以下のような臨床的特徴が生まれます:
参考)https://www.jspc.gr.jp/Contents/public/pdf/shi-guide07_08.pdf

 

ダルテパリンの作用特性

未分画ヘパリンの作用特性

  • 抗第Xa因子とトロンビン両方を阻害
  • APTT延長作用:強い
  • モニタリング:APTT測定が必要

ダルテパリンとヘパリンの半減期と投与方法の違い

薬物動態の面でも、ダルテパリンとヘパリンには明確な違いがあります。低分子ヘパリンの半減期は約2時間程度であり、ヘパリンの30-90分より長く効果が持続します。
参考)https://kango-oshigoto.jp/hatenurse/article/8757/

 

この半減期の違いにより、投与方法にも差が生じます。
ダルテパリンの投与特性

  • 半減期:約2時間
  • 投与頻度:1日1回~2回
  • 投与量:未分画ヘパリンより少量で済む
  • 効果のピーク:3時間程度

未分画ヘパリンの投与特性

  • 半減期:30-90分
  • 投与頻度:持続投与または1日2-3回
  • モニタリング:APTT測定が必要
  • 効果の予測:個体差が大きい

ダナパロイドナトリウム(ヘパリン類製剤)の場合、血漿中半減期は約25時間と非常に長く、1日1~2回の投与で効果が得られます。これは低分子ヘパリンやダルテパリンとは異なる特徴です。

ダルテパリンの臨床応用における血栓予防効果

重症患者を対象とした大規模臨床試験「PROTECT trial」では、ダルテパリンと未分画ヘパリンの比較が行われました。この試験では3,764例を対象に、血栓予防効果と安全性が検討されています。
参考)https://www.nejm.jp/abstract/vol364.p1305

 

PROTECT試験の主要結果

  • 近位下肢深部静脈血栓症発生率:ダルテパリン群5.1% vs 未分画ヘパリン群5.8%(有意差なし)
  • 肺塞栓症発生率:ダルテパリン群1.3% vs 未分画ヘパリン群2.3%(ダルテパリン群で有意に低下)
  • 重大な出血発生率:両群で有意差なし
  • 院内死亡率:両群で有意差なし

特に注目すべきは、事前に規定したper-protocol解析において、ダルテパリン群でヘパリン誘発性血小板減少症(HIT)を呈した患者が少なかったことです(ハザード比0.27,95%信頼区間0.08~0.98,P=0.046)。
がん患者の静脈血栓塞栓症治療においても、ダルテパリンは重要な役割を果たしています。「Caravaggio試験」では、直接経口抗凝固薬アピキサバンとダルテパリンの比較が行われ、アピキサバンはダルテパリンに対して非劣性であることが示されました。
参考)https://www.carenet.com/news/journal/carenet/49933

 

ダルテパリンとヘパリンの副作用プロファイル比較

ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)は、ヘパリン使用時の重篤な副作用として知られています。HITは免疫学的機序により引き起こされる合併症で、血小板数の著明な減少と血栓症を特徴とします。
参考)https://www.toseki.tokyo/blog/touseki-kougyoukoyaku/

 

HITの発症パターン

  • 典型例:ヘパリン投与開始後5~14日
  • 早期発症例:24時間以内
  • 血小板減少率:50%以上の低下
  • 合併症:重篤な動静脈血栓症

低分子ヘパリンであるダルテパリンは、未分画ヘパリンと比較してHITの発症リスクが低いとされています。PROTECT試験の結果でも、ダルテパリン群でHIT発症患者が有意に少なかったことが報告されています。
その他の副作用比較

  • 脂質異常症:低分子ヘパリンで影響が少ない
  • 出血リスク:ダルテパリンで相対的に低下
  • 骨粗鬆症:長期使用時の影響が未分画ヘパリンで顕著

透析治療における使用では、低分子ヘパリンは出血傾向や出血症状の有無に関わらず使用できる抗凝固剤として位置づけられており、出血傾向ないしは軽度~中等度の出血症状を有する患者に特に適しているとされています。
参考)https://www.touseki-ikai.or.jp/htm/05_publish/dld_doc_public/11-1/11-1_9.pdf