アンギオ心カテ違いを医療従事者向けに解説

アンギオ検査と心カテ検査の違いについて、医療従事者向けに詳しく解説します。検査目的、適応疾患、手技の違いを明確に理解できますか?

アンギオ心カテ違い

アンギオと心カテの基本的な違い
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検査対象の違い

アンギオは全身血管を対象とし、心カテは心臓血管に特化

🎯
検査目的の違い

アンギオは血管形態評価、心カテは心機能評価

📊
測定項目の違い

心カテでは心内圧測定や心拍出量評価が可能

アンギオ検査の定義と特徴

アンギオ検査(血管造影検査)は、造影剤を用いてX線で血管の形態を確認し、狭窄や閉塞、動脈瘤の有無を評価する検査です。英語のangiography(アンギオグラフィー)を略した呼称で、全身のあらゆる血管を対象とした包括的な検査手法です。
参考)https://kango.mynavi.jp/contents/nurseplus/career_skillup/20220920-2153407/

 

アンギオ検査の主な特徴:

  • 📍 全身血管を対象とした検査
  • 📍 カテーテル血管造影法、MR血管造影法、CT血管造影法の3種類が存在
  • 📍 血管の形態評価に特化
  • 📍 動脈硬化、血栓、動脈瘤などの診断が主目的

カテーテル血管造影法では、大腿部や腕の血管からカテーテルを挿入し、検査部位まで到達させます。到達後はカテーテルからX線造影剤を注入し、血管造影装置を用いて静止画または動画による血管撮影を実施します。
興味深い事実として、アンギオ検査の画質向上技術であるDSA(デジタル・サブトラクション・アンギオグラフィー)は、デジタル処理により血管だけを見やすくする撮影技術として1980年代に確立されました
参考)https://www.niigata-cc.jp/bumon/housyasenAngio.html

 

心カテ検査の定義と機能評価

心臓カテーテル検査(心カテ)は、心臓の血管(冠動脈)に特化した検査で、心拍出量の測定、心臓の先天異常の検出、心臓腫瘍の検出と生検を目的として行われます。心カテは単なる血管形態の評価にとどまらず、心機能の総合的な評価が可能な検査です。
心カテ検査の主要な測定項目:

  • 💓 心拍出量(1分間に送り出される血液量)
  • 💓 心内圧測定(右房圧、右室圧、肺動脈圧など)
  • 💓 心臓内血液サンプルの酸素飽和度測定
  • 💓 冠動脈血流評価

直径約1~2.5mmのカテーテルを心臓まで到達させ、その管を使って造影剤を注入することで心血管の血流を撮影します。首や腕、鼠径部からカテーテルを挿入し、小さな検査器具をカテーテルの先端まで入れることで、血圧測定や血液サンプルの採取、心臓内部の組織採取が可能です。
参考)https://www.kobe-century-mh.or.jp/outline/facilities/angio/

 

臨床的に重要な点として、心カテ検査では心房中隔欠損症や心室中隔欠損症などの先天性心疾患の血行動態評価において、心エコー検査では評価困難な肺血管抵抗や体血管抵抗の測定が可能です。これらの測定値は外科的治療適応の決定に不可欠な情報となります。

アンギオ検査の適応疾患と検査範囲

アンギオ検査は全身の血管系疾患の診断に広く適用され、検査対象臓器によって細分化されています。脳血管造影では脳動脈瘤や脳血管狭窄の評価、腹部血管造影では肝動脈瘤や腎動脈狭窄の診断などが行われます。
参考)https://hashiguchi-cl.com/page/brainpedia/%E8%84%B3%E8%A1%80%E7%AE%A1%E9%80%A0%E5%BD%B1/

 

主要な適応疾患:
🧠 脳血管疾患:

  • 脳動脈瘤
  • 脳血管狭窄・閉塞
  • 脳動静脈奇形
  • 脳腫瘍の血管評価

🫀 大血管疾患:

  • 大動脈瘤
  • 大動脈解離
  • 大動脈炎症候群

🔬 腹部血管疾患:

  • 肝動脈瘤
  • 腎動脈狭窄
  • 腸間膜動脈閉塞
  • 消化管出血の責任血管同定

カテーテルを心臓の冠動脈に進めると心カテになり、脳に向かう頚動脈に挿入すると脳血管造影になります。脳カテーテル検査は「脳カテ」とは呼ばず、「脳血管造影」または「脳血管撮影」と表現されることが一般的です。
注目すべき技術革新として、2021年以降導入されている血管造影装置では回転撮影機能が追加され、3次元での血管評価が可能となっています。これにより、従来の2次元画像では評価困難であった血管分岐部の詳細な形態評価や、動脈瘤の頸部評価がより精密に行えるようになりました。
参考)https://www.wch.opho.jp/hospital/department/housyasenka/housyasenka08.html

 

心カテ検査の特異的適応と診断価値

心カテ検査は冠動脈疾患の診断における金字塔的地位を確立しており、冠動脈CTアンギオグラフィーや心臓MRIなどの非侵襲的検査法が発展した現在でも、確定診断と治療方針決定において不可欠な検査です。
参考)https://assets.cureus.com/uploads/review_article/pdf/222848/20240125-18910-1ys5eyw.pdf

 

心カテ検査の特異的適応:
💔 虚血性心疾患:

  • 急性心筋梗塞の緊急診断・治療
  • 不安定狭心症の冠動脈評価
  • 慢性冠動脈疾患の重症度評価
  • 冠攣縮性狭心症の診断

🫀 構造的心疾患:

⚡ 不整脈疾患:

心カテ検査では、心拍出量の測定方法として熱希釈法やFick法が用いられ、正確な心機能評価が可能です。正常成人の心拍出量は約5L/分ですが、心不全患者では著明に低下し、この測定値は治療効果の判定や予後予測に重要な情報を提供します。

 

臨床的に極めて重要な知見として、心カテ検査で測定される冠血流予備能(CFR:Coronary Flow Reserve)は、冠動脈の機能的狭窄度を評価する指標として注目されています。形態的に軽度狭窄に見える病変でも、CFRが2.0以下の場合は機能的に有意な狭窄として治療適応となることが多く、この測定は心カテ検査でのみ可能な評価項目です。

アンギオと心カテの検査手技における相違点

アンギオ検査と心カテ検査は、基本的なカテーテル挿入手技は共通していますが、検査目的に応じた手技の詳細に明確な相違があります。両検査とも鼠径部や腕の動脈からアプローチしますが、使用するカテーテルの種類や検査プロトコールが大きく異なります。
参考)https://www.wakayamah.johas.go.jp/medical/chuo_housha/chuo_housha_angiography.html

 

カテーテルの種類と選択:
🔧 アンギオ検査用カテーテル:

  • 診断用:4-5Fr(フレンチ)の細径カテーテル
  • 治療用:6-8Frの太径ガイディングカテーテル
  • 血管選択性を重視した形状設計

💉 心カテ検査用カテーテル:

  • 右心カテーテル:Swan-Ganzカテーテル(熱希釈測定用)
  • 左心カテーテル:Judkinsカテーテル(冠動脈造影用)
  • 圧測定用:マイクロマノメーター付きカテーテル

検査時間にも大きな違いがあり、単純なアンギオ検査では1-2時間程度ですが、心カテ検査では右心カテーテル、左心カテーテル、冠動脈造影を組み合わせるため2-4時間を要することが多くなります。
造影剤の使用量と注入方法:

  • アンギオ検査:選択的血管造影のため比較的少量(20-50ml)
  • 心カテ検査:複数回の冠動脈造影で大量使用(100-200ml)

検査中に実施される独特な手技として、心カテ検査では負荷試験(エルゴノビン負荷、アデノシン負荷)を併用することがあります。これらの薬理学的負荷試験により、冠攣縮や微小血管障害の診断が可能となり、安静時の冠動脈造影では診断困難な病態の評価が実現されます。
また、心カテ検査特有の合併症として、不整脈誘発や心タンポナーデのリスクがあり、これらに対する緊急対応体制の整備が不可欠です。一方、アンギオ検査では造影剤腎症や血管損傷が主要な合併症となり、検査後の管理方法も異なります。

 

最近の技術進歩として、光干渉断層撮影(OCT)や血管内超音波(IVUS)を併用した心カテ検査では、冠動脈プラークの組織性状評価が可能となっており、将来の心血管イベント予測に重要な情報を提供しています