マンジャロ(一般名:チルゼパチド)は、日本では2022年9月に2型糖尿病治療薬として承認された「GIP/GLP-1受容体作動薬」です。この薬剤の最大の特徴は、従来のGLP-1受容体作動薬とは異なり、**GIPとGLP-1という2つのホルモン受容体に同時に作用する世界初の「ツインクレチン」**であることです。
参考)https://www.mdpi.com/1420-3049/27/13/4315/pdf?version=1657082233
GIP(グルコース依存性インスリン分泌促進ポリペプチド)とGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、どちらも食後に小腸から分泌されるインクレチンホルモンです。マンジャロはこれらの受容体に作用することで、血糖値依存的なインスリン分泌促進、グルカゴン分泌抑制、胃排出遅延、食欲抑制といった多面的な効果を発揮します。
参考)https://well-beingclinic.jp/media/medical-diet/what-is-manjaro/
週1回の皮下注射により効果を発揮し、2.5mgから開始して段階的に増量していくのが一般的な使用方法です。この独特な作用機序により、既存の糖尿病治療薬を上回る血糖管理効果と、外科手術に匹敵する体重減少効果を実現しています。
参考)https://soujinkai.or.jp/himawariNaiHifu/mounjaro/
マンジャロの体重減少効果は、複数の大規模臨床試験によって科学的に証明されています。最も注目すべきは、糖尿病のない肥満症患者を対象としたSURMOUNT-1試験の結果です。
この試験では、BMI30以上の肥満症または BMI27以上の過体重を有する成人2,539人を対象に、72週間にわたってマンジャロの効果を検証しました。その結果は以下の通りです。
これらの数値は、従来の食事・運動療法による減量効果の約5~7倍に相当する驚異的な結果です。また、体脂肪量については30%以上の減少が認められ、単なる体重減少ではなく、真の意味での脂肪減少効果が確認されています。
参考)https://clinic.dmm.com/column/medical-diet/2938/
2型糖尿病患者を対象とした臨床試験でも、平均5~10kgの体重減少が報告されており、糖尿病の有無にかかわらず一貫した体重減少効果が確認されています。さらに、減量に成功した患者が継続使用することで、追加の減量効果も期待できることが示されています。
参考)https://tsuneda-clinic.com/blog/mounjaro/
マンジャロがダイエット薬として注目される理由は、その独特な作用機序にあります。従来のGLP-1受容体作動薬は単一受容体への作用でしたが、マンジャロはGIPとGLP-1の両受容体に作用することで、より強力な効果を発揮します。
参考)https://www.sato-naika-clinic.com/glp1/
具体的な作用機序は以下の通りです:
🧠 中枢神経への作用
🍽️ 消化管への作用
💪 代謝への作用
効果の発現時期については、投与開始から2週間前後で食欲抑制効果が現れ始めます。しかし、明確な体重減少を実感できるのは3~6ヶ月の継続使用が必要とされています。一般的に、1ヶ月で2~3kgの体重減少が期待でき、継続することで最大20%を超える体重減少も可能です。
参考)https://neuro.yokohama/articles/20890/
マンジャロは強力な効果を持つ一方で、様々な副作用が報告されており、医療従事者として適切な管理が不可欠です。
参考)https://shibuya-hifuka.jp/wppage/column/manjyaro-hukusayou/
最も頻繁に報告される副作用(消化器系):
これらの消化器症状は、投与開始から2~4週間がピークとなり、多くは一時的で徐々に改善します。しかし、症状が長期化する場合は用量調整や治療中断を検討する必要があります。
参考)https://fit.clinic/med/diet/mounjaro/
重大な副作用と注意すべき患者背景:
⚠️ 膵炎リスク
⚠️ 甲状腺腫瘍リスク
⚠️ 低血糖リスク
⚠️ 腎機能への影響
注射部位の反応(赤み、腫れ、痛み)や、めまい、味覚障害なども報告されています。これらの副作用を予防・軽減するためには、適切な用量設定と段階的な増量、患者教育が重要です。
マンジャロの「痩せる薬」としての注目は高い一方で、適正使用の観点から医療従事者が注意すべき点が多数存在します。特に、SNSでの転売や個人輸入による違法使用が社会問題となっており、医療従事者としての適切な対応が求められています。
参考)https://www.fnn.jp/articles/-/905638
適正使用のための重要なポイント:
📋 適応の厳格な判断
日本では糖尿病治療薬として承認されているため、美容目的での安易な処方は避けるべきです。自由診療での使用においても、BMIや合併症の有無を慎重に評価し、真に医学的適応がある患者に限定する必要があります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11736224/
📊 定期的なモニタリング体制
🎯 患者教育の重要性
副作用の早期発見には患者自身の理解が不可欠です。投与方法、副作用の症状、緊急時の対応について十分な説明を行う必要があります。また、薬剤に依存しすぎず、食事療法や運動療法との組み合わせの重要性も伝える必要があります。
国際的な動向と今後の展望:
アメリカでは2023年11月から肥満症治療薬として「Zepbound」の名称で承認されており、日本でも2025年4月に「ゼップバウンド」として肥満症治療薬の承認を取得しています。これにより、医学的に肥満症と診断された患者への保険適用が可能となり、より適切な使用環境が整備されつつあります。
しかし、日本の医療機関のウェブサイトにおけるGLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する情報の質的評価によると、多くの医療機関のウェブサイトで不適切な情報発信が行われていることが指摘されており、医療従事者には正確な情報提供と適正使用の推進が強く求められています。
マンジャロは確かに革新的な治療薬ですが、その効果の大きさゆえに慎重な医学的管理が必要です。医療従事者として、患者の安全を最優先に考えた適正使用を心がけることが重要です。