バファリン効果と作用機序を医療従事者向けに解説

バファリンは解熱鎮痛薬として広く使用されていますが、その効果や作用機序、副作用について正確に理解していますか?本記事では医療従事者の視点から、バファリンの薬理学的特徴を徹底解説します。

バファリンの効果と作用機序

バファリンの主な効果と特徴
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鎮痛・解熱効果

アスピリンがプロスタグランジン生合成を抑制し、痛みと熱を速やかに緩和します

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胃粘膜保護

制酸成分の配合により、アスピリン単剤よりも胃への負担が軽減されています

速効性

緩衝効果により溶解・吸収が促進され、15〜30分で効果を発揮します

バファリンA主成分アスピリンの薬理作用

バファリンAの主成分であるアスピリン(アセチルサリチル酸)は、代表的な非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)として広く使用されています。アスピリンは血小板シクロオキシゲナーゼ(COX)を不可逆的に阻害することで、痛みや炎症、発熱の原因となるプロスタグランジンの生合成を抑制します。この作用により、頭痛・月経痛・関節痛・神経痛・腰痛・筋肉痛・肩こり痛・咽喉痛・歯痛などの幅広い疼痛に対して鎮痛効果を発揮します。
参考)https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1amp;yjcode=1143010F2074

バファリンAには1回2錠あたり660mgのアスピリンが配合されており、これに加えて200mgの合成ヒドロタルサイト(ダイバッファーHT)が胃粘膜を保護する役割を果たします。このダイアルミネートの緩衝効果により、アスピリンの溶解と吸収が促進され、急速かつ高い血中濃度が得られることで、短時間で鎮痛・解熱・消炎効果が発揮されます。処方薬のデータによると、アセトアミノフェン製剤では服用後およそ30分で血中濃度が最高値に達し、多くの場合15〜30分以内に解熱鎮痛効果が出現すると考えられています。
参考)バファリン®の効果や副作用を徹底解説|成分の違いと選び方【8…

バファリン効果の持続時間と用法用量

バファリンAの用法は、成人(15歳以上)で1回2錠を1日2回服用することが限度とされています。服用間隔は6時間以上空け、なるべく空腹時を避けて服用することが推奨されています。医療用のバファリン配合錠A81では、血栓・塞栓形成の抑制を目的として通常1日1回1錠(アスピリンとして81mg)を服用しますが、症状により1回4錠(324mg)まで増量可能です。
参考)バファリンA 製品紹介|ライオン株式会社

川崎病の治療における用法は体重に基づいて設定され、急性期有熱期間では50〜30mg/kg/日、解熱後の回復期から慢性期では5〜3mg/kg/日の用量が推奨されています。効果の持続時間については、アスピリンの半減期や個人差により変動しますが、適切な服用間隔を守ることで安定した効果が期待できます。
参考)http://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1amp;yjcode=3399100F1116

バファリンの抗炎症・抗血栓作用機序

アスピリンは、そのアセチル基によってCOXを不可逆的に阻害し、血小板のトロンボキサンA2(TXA2)の産生を抑制することで抗血栓作用を発揮します。この作用により、狭心症・心筋梗塞・虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作や脳梗塞)における血栓・塞栓形成の抑制に用いられます。抗炎症作用に関しては、プロスタグランジン生合成抑制、蛋白質分解酵素の活性抑制、リポソーム膜の安定化、肥満細胞からの化学伝達物質の遊離抑制などの機序が考えられています。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=57437

発熱時には種々のサイトカインの産生が促進され、視床下部の体温調節中枢でプロスタグランジンE2(PGE2)の産生が増加します。NSAIDsはCOX阻害によりPGE2産生を抑制し、解熱作用をもたらします。バファリンAは、胃液の酸度を調整し胃中のpHを4〜6に維持することで、アスピリンによる胃障害を著しく軽減しています。
参考)https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/pain_2020/02_05.pdf

バファリン成分種類別の効果特性

バファリンシリーズには複数の製品があり、それぞれ異なる有効成分が配合されています。バファリンAはアスピリン660mg+合成ヒドロタルサイト200mgを配合した基本製品です。バファリンプレミアムはロキソプロフェンナトリウム水和物60mgを主成分とし、速効性に優れたNSAIDs系製品ですが、胃粘膜障害のリスクが報告されています。
参考)【痛み別】つらい生理痛や歯痛。バファリンで効果のある部分はど…

バファリンルナiはイブプロフェン200mg+アセトアミノフェン300mg+カフェインを配合し、月経痛や頭痛に特化した製品です。小児用のバファリンルナJはアセトアミノフェンのみを配合しており、NSAIDsを含まないため胃粘膜障害リスクが低い特徴があります。各製品の選択は、患者の症状、年齢、既往歴、副作用リスクなどを総合的に考慮して行う必要があります。
参考)市販のバファリンで胃粘膜障害は起きるのか?

バファリン効果を最大化する臨床的知見

バファリンの効果を最大化するためには、適切な服用タイミングと用法の遵守が重要です。空腹時の服用を避けることで、胃粘膜への刺激を軽減できます。また、服用間隔を6時間以上空けることで、過剰摂取による副作用リスクを回避し、安定した効果を維持できます。NSAIDsは投与量が多くなると副作用リスクも増強するため、常用量を超えないよう注意が必要です。
参考)バファリンAの基本情報・添付文書情報 - データインデックス

医療従事者として知っておくべき点として、バファリンAに含まれる制酸・粘膜保護成分(ダイアルミネート)は胃刺激を軽減しますが、完全に副作用を防ぐものではありません。高齢者、胃潰瘍・胃炎の既往がある患者、他のNSAIDsやステロイド薬を併用している患者では特にリスクが高まります。日本消化器病学会のガイドラインによると、NSAIDs服用者の有症状性消化性潰瘍の発生率は約15〜25%、無症候性を含めると30〜50%にのぼるとされています。​
バファリン配合錠の医薬品インタビューフォーム(添付文書)
患者への服薬指導では、他の解熱鎮痛薬・かぜ薬・鎮静薬・乗り物酔い薬との併用を避けるよう伝えることが重要です。成分の重複により、効果よりも胃痛や嘔吐などの副作用が強く出る可能性があるためです。ロキソニンやカロナール(アセトアミノフェン)との併用は効果が重複するため禁止されています。一方、トラネキサム酸や咳止めのメジコンとの併用は問題ありません。
参考)https://www.kusurinomadoguchi.com/column/articles/hbqrj/

バファリン副作用と中毒症状への対応

バファリンの主成分であるアスピリンは、適切な用量で使用する限り比較的安全ですが、過剰摂取により重篤な中毒症状を引き起こす可能性があります。アスピリン中毒には、一度に高用量を摂取した際の急性中毒と、低用量を長期間摂取した際の慢性中毒があります。
参考)「アスピリン中毒」を発症した人に現れる特徴をご存じですか?【…

急性中毒では、初期症状として悪心・嘔吐・眠気・耳鳴り・過換気などがみられます。後期症状としては多動・発熱・錯乱・痙攣発作などが出現し、重症例では急性腎不全・呼吸不全・昏睡・脳浮腫・肺水腫・うっ血性心不全・突然の呼吸停止など生命を脅かす症状が発生することがあります。慢性中毒では明確な初期症状が見られないこともありますが、敗血症に似た兆候として軽微な錯乱や精神状態の変化が前兆となる可能性があります。
参考)アスピリンおよび他のサリチル酸化合物による中毒 - 22. …

医療従事者は、患者がこれらの症状を呈した場合、速やかにアスピリン中毒を疑い、適切な診断と治療を行う必要があります。過換気(呼吸性アルカローシス)が低換気(呼吸性および代謝性アシドーシスの混合)へ進行する可能性があるため、呼吸状態の継続的なモニタリングが重要です。​
MSDマニュアル:アスピリンおよび他のサリチル酸化合物による中毒の詳細情報
バファリンの一般的な副作用として、NSAIDsに共通する胃腸障害(胃痛・胃炎・消化性潰瘍・胃出血)があります。アスピリンはCOXを阻害してプロスタグランジン合成を抑制することで鎮痛・抗炎症作用を示しますが、同時に胃粘膜保護機能も低下させるため副作用が生じます。患者には、胃痛や吐き気などの消化器症状が現れた場合は速やかに服用を中止し、医療機関を受診するよう指導することが重要です。​