テセロイキン添付文書で押さえる効能と安全な使い方

テセロイキン(イムネース注35)の添付文書を基に、効能・効果・用法・副作用・相互作用を医療従事者向けに詳しく解説。臨床で見落としがちな注意点とは?

テセロイキン添付文書の効能・用法・副作用と注意点

副腎皮質ホルモンをステロイドとして使うと、テセロイキンの抗腫瘍効果がゼロになることがあります。


テセロイキン添付文書 3つのポイント
💉
効能・効果は3疾患

血管肉腫・腎癌・神経芽腫(ジヌツキシマブとの併用)。2021年6月に神経芽腫への適応が追加承認された。

⚠️
見落とせない相互作用

副腎皮質ホルモン剤との併用は抗腫瘍効果を減弱させる。ヨード系X線造影剤との組み合わせでは投与後1〜4時間以内に重篤な全身反応が起こりうる。

🔬
主代謝臓器は腎臓

腎機能障害患者や高齢者では血中濃度が持続的に高まるリスクがある。65歳以上の103例中、好酸球増多は71.8%に発現。


テセロイキン添付文書が示す効能・効果と承認の経緯

テセロイキン(販売名:イムネース注35)は、遺伝子組換え型インターロイキン-2(rIL-2)製剤であり、1992年3月に製造承認を取得して以来、長年にわたり免疫療法の現場で使用されてきた薬剤です。承認から30年以上が経過していながら、今もなお現行の添付文書(2024年4月改訂・第5版)が更新されており、その内容を正確に把握することが臨床における適切な使用につながります。


添付文書に記載されている効能・効果は以下の3つです。


- 血管肉腫:1992年の初回承認時から認められている適応
- 腎癌:1999年3月に追加承認
- 神経芽腫に対するジヌツキシマブ(遺伝子組換え)の抗腫瘍効果の増強:2021年6月23日に新たに追加承認


3つ目の神経芽腫への適応は比較的新しいものです。これはジヌツキシマブ(商品名:ユニツキシン)およびフィルグラスチムとの3剤併用レジメンとして承認されたもので、テセロイキン単独での使用は適応外となります。保険給付上の注意として「ジヌツキシマブおよびフィルグラスチムとの併用療法に限り使用されるものであること」と厚生労働省保険局医療課長通知(令和3年6月23日付け保医発0623第1号)にも明記されています。つまり単剤での算定はできないということです。


国内第IIb相臨床試験(GD2-PII試験)では、初回診断時31歳未満の高リスク群神経芽腫患者35例を対象に比較試験が実施されました。ジヌツキシマブ+フィルグラスチム+テセロイキン群(DIN/FIL/TEC群)の2年無イベント生存率は80.8%(95%信頼区間:51.4〜93.4%)であり、米国レジメン群の62.3%を上回る結果が得られています。これはがん患者の予後改善という点で非常に意味のある数値です。


臨床試験に組み入れられた患者の年齢は2〜8歳であった点も、添付文書に明記されています。小児を対象とした薬剤であるため、神経芽腫適応での投与に際しては小児腫瘍専門施設や専門医との連携が前提となります。


PMDAによるイムネース注35の最新添付文書・審査報告書(医療関係者向け)


テセロイキン添付文書が規定する用法・用量の疾患別の違い

用法・用量は対象疾患によって異なります。これが原則です。血管肉腫と腎癌では同じ投与量から開始しますが、最大投与量に明確な差があります。疾患ごとに正確に把握しておく必要があります。


〈血管肉腫〉


| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 投与量(標準) | 1日70万単位(1日1〜2回に分けて連日点滴静注) |
| 最大投与量 | 1日140万単位 |
| 溶解方法 | 添付注射用水1mLで溶解後、生食または5%ブドウ糖液200〜500mLに加えて点滴 |


〈腎癌〉


| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 投与量(標準) | 1日70万単位(1日1〜2回に分けて連日点滴静注) |
| 最大投与量 | 1日210万単位 |
| 追加注意 | 増量時は肝機能検査値異常・体液貯留が発現しやすい |


腎癌の最大投与量は血管肉腫の1.5倍であることに注意してください。増量によるリスクとして、添付文書は肝機能検査値異常と体液貯留の発現増加を明確に警告しています。


〈神経芽腫(ジヌツキシマブの抗腫瘍効果増強)〉


神経芽腫への使用では投与スケジュールが複雑です。28日間を1サイクルとして以下のように投与します。


- 第2・4・6サイクルの1〜4日目:75万単位/m²(体表面積)を1日1回、24時間持続点滴静注
- 第2・4・6サイクルの8〜11日目:100万単位/m²(体表面積)を1日1回、24時間持続点滴静注


血管肉腫・腎癌とは異なり、神経芽腫では体表面積あたりの換算が必要です。小児患者が対象となるため、体重・体表面積の計算には特に注意が必要です。これは重要です。


調製上のポイントとして、添付文書14.1.3は「用時調製し、溶解後は速やかに使用すること」と定めています。あらかじめ溶解して長時間放置した状態での投与は、有効性・安全性の保証がなくなります。調製は直前に行うことが条件です。


くすりのしおり(患者向け情報)イムネース注35|用法・用量・副作用の概要を確認できる


テセロイキン添付文書が警告する重大な副作用と発現頻度

添付文書11.1に記載された重大な副作用は、発現頻度のある項目とない項目の両方が存在します。これは知っておくべきことです。臨床での観察ポイントを正確に押さえるために、副作用ごとの特性を理解することが重要です。


11.1.1 体液貯留(12.4%)


毛細血管漏出症候群(capillary leak syndrome:CLS)によると考えられる副作用で、体重増加(5.8%)・浮腫(4.3%)・胸水・腹水・肺水腫等(3.5%)・尿量減少(1.6%)・血圧低下(2.7%)などが含まれます。体液貯留は投与開始1〜2週目に発現することが多いとされており、開始直後の集中的な観察が必要です。ちょうど1〜2週間が最も危険な時期、という認識が必要です。


体重変化のモニタリングは特に有効な観察手段の一つとされています。毎日の体重測定を習慣化することで、体液貯留の早期発見につながります。


11.1.2 うっ血性心不全(0.4%)


発生頻度は低いものの、心疾患または既往歴のある患者では特に注意が必要です(添付文書9.1.2)。心疾患の既往がある患者に投与する際は、あらかじめ循環器科との連携を検討することが賢明です。


11.1.3 抑うつ(0.8%)・自殺企図(頻度不明)


精神症状への関与は見落とされがちです。意外ですね。発現頻度0.8%という数値は「まれ」に分類されますが、自殺企図という重篤な転帰が報告されている以上、精神状態の変化を早期に察知する体制が求められます。患者本人だけでなく、家族や介護者への観察依頼も重要です。


11.1.4 誘発感染症・感染症の増悪(頻度不明)


添付文書によると、大量投与により好中球機能が抑制され、感染症リスクが高まるとされています。これは単に発熱を見るだけでは不十分で、感染症の初期サインを細かくモニタリングする必要があることを意味します。


11.1.5 自己免疫現象(頻度不明)


強皮症・溶血性貧血・糖尿病などの自己免疫疾患を誘発する可能性があります。免疫賦活という本薬の作用機序そのものが、自己免疫反応につながりうるという点で、長期投与患者では自己免疫マーカーの定期的なチェックが必要です。


なお、その他の副作用のなかで10%以上の高頻度で発現するものとして、発熱(73.3%)・悪寒・戦慄(39.9%)・全身倦怠感(34.9%)・食欲不振(36.8%)・好酸球増多(69.4%)・ALT上昇・AST上昇が挙げられています。発熱は患者の4人に3人以上に起こると考えてもよく、投与前から患者・家族への十分な説明が不可欠です。


厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル」|副作用早期発見・対処法の詳細確認に有用


テセロイキン添付文書の相互作用で特に注意すべき2つの薬剤

添付文書10.2の併用注意は2項目しかありませんが、どちらも臨床的に重大なリスクを持っています。これが原則です。少ないからこそ、全件確実に把握しておく必要があります。


① 副腎皮質ホルモン剤(ステロイド薬)


「インターロイキン-2製剤の抗腫瘍効果を減弱させる可能性があるので併用を避けること。やむを得ず併用する場合は慎重に投与すること」と記載されています。


がん患者では症状緩和や免疫反応の制御のためにステロイドを使用する機会が多く、テセロイキンとの同時使用が治療効果を損なうリスクがあります。特に支持療法としてデキサメタゾンやプレドニゾロンを使っているケースでは、テセロイキンの開始前に投薬内容の見直しが必要です。機序は現時点では不明とされています。


実際の臨床現場では、制吐療法や肺炎・ショックに対する対応でステロイドを緊急投与する場面もあります。そのような場面では、テセロイキンの抗腫瘍効果が著しく低下するリスクを念頭に置き、担当医への速やかな報告が求められます。


② ヨード系X線造影剤


「テセロイキンを含む治療を受けた患者が、引き続きヨード系X線造影剤を投与されたときに、およそ1〜4時間後に発熱・悪寒・戦慄・悪心・嘔吐・紅斑・低血圧・浮腫等があらわれたとの報告がある」と明記されています。


これは見落とされがちな相互作用です。テセロイキン投与歴のある患者が造影CT検査を受ける場合、投与からの経過時間だけでなく、その間隔が十分でない場合には重篤な反応が起こりうる点を放射線科やCT室スタッフにも確実に伝える必要があります。患者が他科で造影検査を受ける際に情報が共有されない事例は起こりやすいため、チーム間の情報連携が重要です。


この相互作用のメカニズムも現時点では不明ですが、発症時間(1〜4時間)が明確に示されているため、造影検査後の観察体制をあらかじめ整備しておくことが望まれます。テセロイキン使用歴を必ずお薬手帳や電子カルテに記録しておくことが役立ちます。


テセロイキン添付文書の皮下投与・高齢者・特定患者への注意点(独自視点)

添付文書には、主要な副作用や禁忌情報に隠れがちな「重要な基本的注意」が複数記載されており、臨床での見落としが起きやすい項目です。意外ですね。以下に特に注意すべき内容を整理します。


皮下投与の有効性は確立されていない(8.5)


添付文書では「本剤の皮下投与時の有効性は確立していない」と明記されています。点滴静注が規定の投与経路であり、皮下投与での使用は有効性の根拠を欠いた使用方法となります。点滴静注が困難な患者の場合でも、皮下投与への切り替えは適切な対応とは言えません。インタビューフォームでも「使用経験が少なく、皮下投与時の有効性は確立していないために注意を喚起した」と明記されています。


高齢者(65歳以上)への投与(9.8)


テセロイキンは主として腎臓で代謝・排泄されます。高齢者では加齢に伴い腎機能が低下していることが多く、血中濃度が高い状態が持続するリスクがあります。承認時データ(血管肉腫・腎癌)において、65歳以上の高齢者103例中の副作用発現状況は以下のとおりです。


| 副作用 | 発現数 | 発現率 |
|---|---|---|
| 発熱 | 72例 | 69.9% |
| 好酸球増多 | 74例 | 71.8% |
| 体液貯留 | 13例 | 12.6% |
| 肝機能検査値異常 | 19例 | 18.4% |
| 血圧低下 | 5例 | 4.9% |
| 腎機能検査値異常 | 6例 | 5.8% |


高齢者では発熱と好酸球増多がそれぞれ約7割という高頻度で発現しています。これは高い頻度です。バイタルサインと血液検査結果の定期的な確認を、より短い間隔で行うことが推奨されます。


投与前のプリック試験(8.2)


過敏症等の反応を予測するために、使用前に本剤によるプリック試験を行うことが「望ましい」と記載されています。これは義務ではありませんが、アレルギー素因のある患者(9.1.1参照)では特に実施が推奨されます。プリック試験を省略する場合は、少なくとも投与開始直後からアナフィラキシー様反応への対応準備を整えておく必要があります。


腎機能障害患者・肝機能障害患者(9.2〜9.3)


腎機能障害患者では症状が悪化するだけでなく、本剤の代謝・排泄が遅れるため副作用が強く発現する可能性があります。重篤な肝障害のある患者でも症状の悪化が懸念されます。腎・肝機能の確認が条件です。投与前の腎機能・肝機能の評価と、投与期間中の定期的な検査は必須と言えます。


妊婦・授乳婦(9.5〜9.6)


妊婦または妊娠の可能性のある女性への投与は「望ましくない」とされています。動物試験(ウサギ)で流産および胎児奇形の報告があります。授乳婦については、乳汁中への移行が動物試験(ラット)で報告されており、授乳の継続または中止を治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮して検討することが必要です。


日本臨床腫瘍学会「がん免疫療法ガイドライン第3版(案)」|IL-2製剤を含む免疫療法全般の最新ガイドラインとして参考になる


テセロイキン添付文書から学ぶ薬物動態と作用機序の臨床的意味

添付文書の薬物動態(16項)と薬効薬理(18項)には、臨床に直結する重要な情報が記載されています。これらを理解することで、副作用の発現時期や投与方法の根拠が見えてきます。


作用機序(18.1)


テセロイキンは主としてT細胞やNK(ナチュラルキラー)細胞に結合・活性化することで、細胞障害能の高いキラー細胞を誘導して腫瘍細胞を障害します。さらにB細胞やマクロファージにも結合し、広範な免疫賦活作用を発揮します。これがいわゆる「免疫チェックポイント阻害薬」とは異なる「免疫賦活剤(BRM:生物学的応答調節剤)」としての特徴です。


がん免疫療法の中でも、直接的にリンパ球を活性化するアプローチをとるため、発熱や炎症症状が高頻度で発現するのはこの機序に由来します。発熱は薬が働いているサインでもありますが、患者にとっては辛い症状でもあります。発熱のケアと患者への事前説明を両立させることが大切です。


血中半減期(16.1)


悪性腫瘍患者(成人)4例への70万単位を2時間定速静注したデータでは、消失は2相性を示しました。


| パラメータ | 値 |
|---|---|
| Cmax(最高血清中濃度) | 53.6±13.0 単位/mL |
| T½(α相) | 0.23±0.15時間(約14分) |
| T½(β相) | 1.46±0.79時間(約87分) |


α相の半減期が約14分という非常に短さに注目してください。これは非常に短い時間です。投与終了後の急速な血中濃度低下を意味しており、持続的な免疫活性化には規則的な投与スケジュールの遵守が不可欠です。投与間隔が空いてしまうと、期待する免疫刺激効果が維持できなくなる可能性があります。


代謝・排泄(16.4〜16.5)


テセロイキンは主として腎臓の近位尿細管で代謝されます。尿中への排泄は測定限界以下であり、原形での尿排泄はほとんど行われていないと考えられます。つまり、腎機能が低下すると代謝が遅れ、血中に薬物が長く滞留する状態が生じます。腎機能低下患者での副作用増強がこの薬物動態から説明できます。


過量投与(13.1)


通常投与量の10倍以上の投与では、重篤な低血圧・腎不全・呼吸不全・肺うっ血・精神状態の変化・心筋虚血・消化管出血・腸管穿孔・閉塞等が報告されています。過量投与時には副腎皮質ホルモン剤の静脈内投与により生命にかかわる重篤な副作用が緩和されたとの海外報告があります(13.2)。通常時は「併用を避けること」とされているステロイドが、過量投与という緊急事態では救命処置として使われるという逆転した状況が存在することも把握しておく必要があります。


KEGGデータベース イムネース医薬品情報|添付文書全文・薬物動態データを参照可能