テネシンの漢字「鿬」は、実は日本人の苗字「石田」と同じ部品で作られている。
テネシン(英語表記:Tennessine)は、元素記号Ts・原子番号117の合成元素です。周期表の第7周期に位置し、既知の元素のなかで2番目に重い元素として知られています。日本ではカタカナで「テネシン」と表記されますが、中国語圏では漢字1文字で表します。その漢字が「鿬(てん)」です。
「鿬」という字は、左側に「石(いしへん)」、右側に「田(た/でん)」を組み合わせた形声文字です。読み方は中国語で「tián(ティアン)」と発音します。この字は2017年、中国科学院・国家語言文字工作委員会・全国科学技術名詞審定委員会によって正式に決定されました。
日本のPCや一部アプリでは、「鿬」がまだ正しく表示されない場合もあります。これはUnicodeに比較的最近追加された文字であるためです。意外ですね。
元素としてのテネシンは半減期が約14〜78ミリ秒という極めて短い時間しか存在できません。つまり生成した瞬間にほぼ消えてしまうということですね。実際に目に見える量を手に取ることは、現在の技術では不可能な元素です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 漢字表記 | 鿬 |
| 読み(中国語) | tián(ティアン) |
| 元素記号 | Ts |
| 原子番号 | 117 |
| 族・周期 | 第17族(ハロゲン族)・第7周期 |
| 漢字決定年 | 2017年 |
| 半減期 | 約14〜78ミリ秒 |
「鿬」の右側にある「田」は、偶然に選ばれたわけではありません。これには明確な由来があります。
テネシンという元素名は、アメリカ合衆国テネシー州(Tennessee)にちなんで命名されました。中国語でテネシー州は「田納西(tián nà xī)」と表記します。この「田納西」という3文字のうち、最初の「田(tián)」の発音がテネシーの冒頭音節と対応しているため、音符(つくり)として「田」が採用されたわけです。
これが原則です。中国語の元素漢字は、部首が物質の状態を、つくりが発音を示す「形声文字」の方式で作られています。
学術出版社・化学同人が発行した「漢字de周期表」には、このことが次のように記されています。「つくりの『田』、こちらも田納西が『テネシー』を意味するので、この文字に決まりました。全国の石田さんは、きっとテネシンに親近感を覚えることでしょう」と。これは使えそうです。
テネシン(Ts)の命名は、発見に貢献したオークリッジ国立研究所、ヴァンダービルト大学、テネシー大学がいずれもテネシー州に所在することが背景にあります。2016年にIUPAC(国際純正・応用化学連合)が正式承認し、2017年にモスクワのロシア科学アカデミーで命名式典が行われました。
元素名の由来となった地名に関する参考情報として、化学同人の資料が役立ちます。
化学同人「漢字de周期表」PDF — テネシン・ニホニウム・オガネソンの漢字由来をわかりやすく解説
「なぜテネシンは金偏や気がまえではなく、石偏なのか?」と疑問に思う方も多いでしょう。これは中国語の元素漢字が持つ厳格な体系によるものです。
中国語では、全118種類の元素を漢字1文字で表すにあたり、以下の4種類の部首をルールとして定めています。