免疫成分を多く与えるほど赤ちゃんは健康になれると思っていませんか?実は与えすぎると、自分の体を攻撃するアレルギー疾患のリスクが高まります。
オステオポンチンという名前を初めて聞く方も多いかもしれません。これは1986年に骨を形成する細胞で発見されたたんぱく質で、「骨(osteo)と細胞を結ぶ橋(pontin)」という意味を持っています。発見当初は骨との関わりに注目されていましたが、その後の研究で母乳にも高濃度に含まれることが判明し、一気に乳児栄養の研究対象として注目されるようになりました。
オステオポンチンは、免疫細胞が分泌する「サイトカイン」とよばれるたんぱく質の一種です。人体のあらゆる組織に存在しますが、特に臍帯血(へその緒や胎盤に含まれる血液)、乳児の血漿、そして母乳に高濃度に含まれています。成人の血液中の濃度と比較すると、母乳中の濃度は実に100〜1,000倍にも及ぶという報告もあります。
つまり、赤ちゃんが最も必要とするタイミングにこそ、オステオポンチンの濃度が高く保たれているということです。これは意義深いですね。
また、産後日数が経過するにつれてオステオポンチンの濃度が徐々に低下していくことも研究で明らかになっています。生まれたばかりの赤ちゃんに特に必要な成分であることが、この経時変化からも読み取れます。オステオポンチンが赤ちゃんの成長に重要だということです。
オステオポンチンが赤ちゃんに対して持つとされる主な働きは、大きく3つに分類されています。それぞれ具体的に見ていきましょう。
① 免疫機能の発達を助ける働き
生後間もない赤ちゃんの免疫系はまだ未熟です。オステオポンチンは、免疫細胞に直接働きかけて免疫のバランスを整える機能があるとされています。免疫は強いほど良いと思われがちですが、実は過剰になると自分の体の細胞まで攻撃してしまい、アレルギー疾患につながる恐れがあります。適切な量のオステオポンチンが、そのバランスを整える役割を担っているのです。
さらに、ウイルスが感染するためには体内の「レセプター」という受容体と結びつく必要があります。オステオポンチンはウイルスより先にそのレセプターと結びつき、感染をブロックする機能があることも示されています。加えて、免疫細胞が細菌を除去しやすくする補助的な機能もあります。免疫に対する多角的な働きが注目点です。
② 脳の発達を助ける働き
2019年に発表された研究(Jiang R, et al. FASEB J. 2019)では、母乳のオステオポンチンが脳内のオステオポンチンを増加させ、乳幼児期の脳の発達を促す可能性が示されています。認知・学習機能の発達に関与するとも言われており、早い段階からの摂取に意味があると考えられています。これは使えそうです。
③ 消化管機能の発達を助ける働き
サルを用いた研究(Donovan SM, et al. J Nutr. 2014)では、オステオポンチンを配合した粉ミルクで育てた場合に、消化管の遺伝子発現が母乳で育てた場合に近づくことが報告されています。消化管が未熟な乳児期に、消化吸収機能を整える土台として機能している可能性があるということです。
雪印ビーンスタークのオステオポンチン特集ページ(免疫・脳・消化管への3つの機能を詳しく解説)
市販の粉ミルクは基本的に牛乳を原材料としています。牛乳にもオステオポンチンは含まれていますが、母乳と比べると大きな差があります。母乳に含まれるオステオポンチンの濃度は1Lあたり約99.7〜266.2mgであるのに対して、牛乳は1Lあたり約18mgと報告されています(Schack L, et al. J Dairy Sci. 2009)。これは母乳の5分の1〜10分の1程度に相当します。
つまり、牛乳をベースとした一般的な粉ミルクには、オステオポンチンがほとんど含まれていないか、含まれていても非常に少量だということです。長年このことが見落とされてきたのは、粉ミルクの開発が牛乳成分の分析を中心に行われており、母乳中の高濃度オステオポンチンに気づく機会が少なかったからでした。
配合量が重要なポイントです。免疫成分は多ければ多いほど良いわけではなく、少なすぎると効果が出にくく、多すぎると免疫バランスが崩れてアレルギーリスクにつながることがあります。日本初のオステオポンチン配合粉ミルク「ビーンスターク すこやかM1」(雪印ビーンスターク)では、100mLあたり6.5mgという日本人の母乳に含まれる量の範囲内で設計されています。これが条件です。
また、同じ日本人のお母さんの母乳でも個人差は大きく、最高474.8μg/mLから最低2.2μg/mLまで、約200倍の差があるという研究結果もあります。はがき1枚分の面積に相当するほど小さな差ですが、乳児の発育には無視できない差となる可能性があります。
ベビーカレンダーによるオステオポンチン新配合レポート(牛乳との濃度差・適正量の考え方が詳しい)
「配合されていると言われても、本当に効果があるの?」と思われる方もいるでしょう。この点については、赤ちゃんを対象にした臨床研究(Lonnerdal B, et al. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2016)が参考になります。
この研究では、健康な赤ちゃんを3グループに分けて生後6か月間の健康状態を定期的に観察しました。グループ1は一般的な粉ミルク(オステオポンチン非配合)、グループ2はオステオポンチンを母乳に近い濃度まで配合した粉ミルク、グループ3は母乳で育てた赤ちゃんです。
| グループ | 育て方 | 発熱の発症率 |
|---|---|---|
| グループ1 | 一般的な粉ミルク | 最も高い |
| グループ2 | OPN配合粉ミルク | 中間(母乳に近い) |
| グループ3 | 母乳 | 最も低い |
結果として、一般的な粉ミルクで育った赤ちゃんは母乳で育った赤ちゃんに比べて発熱率が高く、オステオポンチン配合のミルクで育ったグループは一般粉ミルクより発熱率が低く、母乳グループの値に近づいていることがわかりました。発熱の少なさは赤ちゃんの生活の質に直結します。
「発熱が少ない=育児の負担軽減」という視点でも、この差は無視できません。赤ちゃんの発熱で何度も夜間の病院受診や育児休暇の延長を経験した保護者にとって、この差は非常に実感しやすいはずです。発熱回数の違いが生活負担の軽減につながるということです。
雪印ビーンスタークのニュースリリース(母乳中オステオポンチンの国際共同研究と発熱抑制の報告)
一般的にあまり知られていない事実があります。雪印ビーンスタークの研究によると、過去から現代にかけて日本人の母乳に含まれるオステオポンチン濃度が低下していることが確認されています(Takahashi T, et al. Nutrients. 2023)。
つまり、昔の日本人お母さんの母乳と今の母乳では、オステオポンチンの量が異なるという状況になっているわけです。意外ですね。
なぜ低下しているのか、その原因はまだ完全には解明されていません。ただ、母体の喫煙習慣、BMI、出産方法、妊娠中の体重増加、授乳中のエネルギー摂取量など、生活習慣との関連が示唆されています。日本人女性のライフスタイルが変化したことで、母乳の成分構成にも影響が及んでいる可能性があります。
さらに、国別の比較では、同じアジアでも日本とデンマークでは母乳1mLあたりの濃度が約2.5倍異なることもわかっています。デンマーク人の母乳が約99.7μg/mLなのに対して、中国人の母乳は約266.2μg/mLと報告されており、日本人は182.5μg/mLと4か国中2番目に低い値でした。これは気になるデータです。
こうした「現代の母乳の変化」という観点からも、オステオポンチンを意識的に補える粉ミルクを選ぶことが、より現実的な意味を持つようになっています。母乳と粉ミルクを組み合わせた混合育児をしている場合でも、選ぶ粉ミルクの成分を確認するひと手間が重要だと言えます。粉ミルク選びの視点を一つ増やすことが大切です。