オドリックに呪禁を共有させても、戦闘フェイズ前に除去されると全クリーチャーが丸裸になります。

マジック:ザ・ギャザリング(MTG)において、オドリック(Odric)はイニストラード次元に生きるアヴァシン教会の聖戦士であり、2012年の基本セット2013で初登場したキャラクターです。優れた指揮官として「熟練の戦術家」「月皇の司令官」「月銀調停の受領者」など複数の肩書きを持ち、長きにわたりイニストラードの人々を怪物から守り続けてきた存在です。
カードとしては現在3種類が存在します。最初の《熟練の戦術家、オドリック》はマナコスト2白白の伝説クリーチャー(人間・兵士)で、パワー3・タフネス4の先制攻撃持ち。次に《月皇の司令官、オドリック》はマナコスト3白、パワー3・タフネス3。そして《血に呪われた者、オドリック》はマナコスト1赤白、パワー3・タフネス3の吸血鬼・兵士です。
それぞれがまったく異なる方向性の能力を持っています。戦術でブロックを支配するか、キーワードの嵐で軍を鼓舞するか、血トークンで盤面を広げるか、という3択は同じキャラクターとは思えないほどのバリエーションです。これは設計上の意図であり、イニストラードの物語における彼の変遷を反映したものでもあります。
MTGをはじめて間もない方は「オドリック」と聞いてどのカードを指しているのか混乱することがありますが、文脈や略称から判断するのが基本です。
| カード名 | コスト | P/T | 収録セット |
|---|---|---|---|
| 熟練の戦術家、オドリック | 2白白 | 3/4 | 基本セット2013・統率者マスターズほか |
| 月皇の司令官、オドリック | 3白 | 3/3 | イニストラードを覆う影・統率者マスターズほか |
| 血に呪われた者、オドリック | 1赤白 | 3/3 | イニストラード:真紅の契り |
参考:MTG Wikiのオドリック総合解説ページ(キャラクター設定・登場カード一覧など)
MTG Wiki – オドリック/Odric
《熟練の戦術家、オドリック》の能力は一言でいうと「戦闘のブロックを丸ごと支配する」というものです。オドリック自身+3体以上のクリーチャーで攻撃に参加すると、その戦闘でどのクリーチャーがどのようにブロックするかを、あなたが決定できるようになります。
これが実際のゲームでどういうことかというと、相手のすべてのクリーチャーに「ブロックするな」と指示できるため、攻撃クリーチャーが実質的に全員アンブロッカブルになるのです。たとえば、相手が飛行持ちの5/5を1体立てていても、それにブロックを割り当てなければ素通りできます。逆に言えば、相手の最も強力なクリーチャーをオドリック自身(先制攻撃3/4)に単独で向かわせて一方的に倒す、という「引きずり出し」の使い方も可能です。
ただし、注意点があります。この能力にはルール上の制約が存在します。タップ状態のクリーチャーや「ブロックに参加できない」効果を持つクリーチャーは、いくらあなたが指定しても参加させることができません。また、飛行を持たないクリーチャーは飛行クリーチャーをブロックできないというルールも引き続き適用されます。つまりブロック制限・強制はすべて守らなければなりません。
一方、非常に重要なルールとして「能力が誘発した後にオドリック自身が除去されても、その戦闘中はあなたがブロックを選べる」という点があります。これは押さえておきたいところです。
構築面では4マナとやや重く、条件として自身含め4体の攻撃クリーチャーが必要なため、ウィニー系デッキでトークンを横並びにする構成と非常に相性が良好です。リミテッドではほぼ確実にエンドカードとして機能します。
参考:熟練の戦術家、オドリックのカード詳細・ルール解説
MTG Wiki – 熟練の戦術家、オドリック
統率者戦(EDH)において圧倒的な人気を誇るのが《月皇の司令官、オドリック》です。その能力は「各戦闘の開始時」に誘発し、あなたがコントロールするクリーチャーの中に特定のキーワード能力を持つものが1体以上いれば、ターン終了時まで自軍全体がその能力を得るというものです。
対象となるキーワード能力は合計12種類です。飛行・先制攻撃・二段攻撃・接死・速攻・呪禁・破壊不能・絆魂・威迫・到達・トランプル・警戒という12種が共有対象となります。たとえば1体でも飛行持ちがいれば、地上クリーチャーを含む自軍全体が一斉に飛行を得て空を飛び始めます。これは相手にとって計算を大きく狂わせる要因になります。
重要な注意点として、呪禁の共有は除去耐性としてほぼ機能しません。なぜかというと、呪禁はオドリックの能力が戦闘フェイズに誘発した後に付与されるものですが、その前のメインフェイズや戦闘開始ステップに入る前に除去が飛んでくると、まだ呪禁を持っていない状態で対処されてしまうからです。呪禁を共有する前のタイミングを狙われると、まるまる機能しないのです。これが冒頭で触れた「驚きの落とし穴」の正体です。
また、果敢(Prowess)は共有対象のキーワード一覧から意図的に除外されています。これは「1体のクリーチャーが複数の果敢を持つことに意味がある唯一のキーワード」であり、「能力を共有する」というオドリックのコンセプトと噛み合わないと設計側が判断したためです。知らずに果敢持ちを積み込んでも無駄になるので注意が必要です。
統率者デッキを組む際の戦略として「オドリックを先出しし、キーワード持ちクリーチャーを後から展開する」プレイが基本です。オドリックを後から出すと召喚酔いで能力が次のターン以降にしか活きないため、先出し→後続展開の順番を守るのが重要です。
参考:月皇の司令官、オドリックのルール・統率者デッキ紹介
MTG Wiki – 月皇の司令官、オドリック
《血に呪われた者、オドリック》は2021年の『イニストラード:真紅の契り』に登場した最新版です。コストは1赤白と軽く、3マナで戦場に出せる伝説クリーチャー(吸血鬼・兵士)で、パワー3・タフネス3とサイズも悪くありません。
その能力はETB(戦場に出たとき)誘発で、飛行・先制攻撃・二段攻撃・接死・速攻・呪禁・破壊不能・絆魂・威迫・到達・トランプル・警戒のいずれかを持つクリーチャーの数をXとして、血トークンをX個生成します。つまり、キーワード持ちクリーチャーを10体並べた状態でオドリックを出せば、一度に血トークンが10個生まれるわけです。
血トークンとは「1点のライフを支払い、カードを1枚捨て、カードを1枚引く」という起動型能力を持つアーティファクト・トークンです。スタンダード的な使い方はドロー加速ですが、EDH(統率者戦)では血トークン自体がアーティファクトであることを利用してコンボに発展させることができます。たとえば「アーティファクトが戦場に出るたびダメージを与えるクリーチャー」と組み合わせると、血トークン大量生成が即座に大ダメージになります。これは少数しか知らない独自のコンボルートです。
また、血に呪われた者のデメリットとして「血トークン生成は戦場に出た時の一度きり」という点が挙げられます。そのため、点滅(フリッカー)効果で繰り返し能力を誘発させる手法が実戦では取られます。これが統率者戦での核心的な使い方です。
参考:血に呪われた者、オドリックのカード詳細(MTG Wiki)
MTG Wiki – 血に呪われた者、オドリック
月皇の司令官、オドリックを統率者に据えたデッキを組む場合、デッキ構築の方針は非常にシンプルです。「12種のキーワードをできるだけ多くバラけて持つクリーチャーを白単色でそろえる」というのが骨格になります。
特に重視されるのは飛行・先制攻撃・絆魂・二段攻撃の4つです。これらは攻守に渡って機能するため、1枚で複数のキーワードを持つクリーチャーが非常に価値を持ちます。たとえば《悪斬の天使》は先制攻撃・飛行・絆魂の3つを同時に備えており、1枚でオドリックの3種共有を引き受けてくれる優秀なサポーターです。
また、《黎明をもたらす者ライラ》も飛行・先制攻撃・絆魂の3種持ちとして非常に相性が良好です。速攻を絡めたいなら装備品の「速足のブーツ」が有効で、これはオドリック本体に装備させることで召喚酔いを無効化し、出したターンから能力を起動できるようにします。これは重要な戦略です。
土地構成については、白単色デッキは色事故が少ない反面、ドロー力が弱いことが白の宿命的な弱みとされています。そのため宝物の地図や秘儀の印鑑など、ドローや加速を補助するカードを複数採用することが推奨されます。
デッキの動かし方の基本手順は次のとおりです。
特にリミテッドで「キーワードを複数持ったクリーチャーが少なければ月皇の司令官は弱い」と思っている方は多いですが、実は1〜2種類のキーワードだけでも機能します。先制攻撃だけでも全体に付与すれば戦闘を有利に展開できるためです。これが意外な使い方として上級者にはよく知られています。
参考:晴れる屋のオドリック統率者デッキレシピ(ユーザー投稿構成例)
晴れる屋 – オドリック統率者デッキ
カードゲームとしてのオドリックをさらに深く理解するには、背景世界のストーリーを知ることが助けになります。オドリックはイニストラードのアヴァシン教会に仕える人間の聖戦士で、優れた指揮官として多くの戦場を生き抜いてきた人物です。かつて息子を狼男に殺された経験から、怪物全般に強い憎しみを持ちつつも、その憎しみを戦術の鋭さに変換してきた人物でもあります。
《熟練の戦術家、オドリック》は2012年(基本セット2013)の時代、アヴァシンが獄庫から解放されて人類が勢力を取り戻した時期の彼を表しています。このころのオドリックはイニストラード各地の怪物情報を分析し、連隊を率いて討伐に赴く正統派の指揮官でした。
その後《月皇の司令官、オドリック》(イニストラードを覆う影)では、月皇評議会の一員として「月皇の司令官」という肩書きを得ます。しかしこの時期、アヴァシン自身が狂気に走り教会が腐敗していく中で、オドリックは正義と信仰の間で揺れ続けます。彼が訓練した聖戦士たちを自らの手で切り伏せなければならなくなったとき、その心は折れてしまいます。苦悩が深まったのです。
そして《血に呪われた者、オドリック》(イニストラード:真紅の契り)では、なんと吸血鬼へと変貌を遂げた姿が描かれています。人間の守護者だったオドリックが、かつて憎悪した吸血鬼そのものになってしまうという衝撃的な結末です。このアーク全体がMTGの中でも特に語り継がれるキャラクター変遷として高く評価されています。
MTGの背景世界をもとにデッキに込める意味合いを考えると、ゲームとしての楽しさに加えてストーリー的な没入感も加わります。これは純粋に競技的なアプローチとは別の、MTGならではの醍醐味のひとつです。
参考:MtG公式の「熟練の戦術家、オドリック」ストーリー記事(日本語版)
mtg-jp.com – 熟練の戦術家、オドリック(ストーリー)