膝靱帯損傷の症状と治療方法について詳しく解説

膝靱帯損傷の症状や治療法、リハビリテーションについて医療の観点から詳しく解説します。靭帯損傷を防ぐためには日常生活でどのような対策が必要でしょうか?

膝靱帯損傷の症状と治療方法

膝靱帯損傷の基礎知識
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膝靭帯の種類と役割

膝関節には4つの主要靭帯があり、それぞれが関節の安定性を保っています。

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典型的な損傷メカニズム

スポーツや事故による捻りや衝撃が靭帯損傷の主な原因です。

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早期治療の重要性

早期の適切な治療が将来の膝関節機能と痛みの予防につながります。

膝靱帯損傷の種類と発生メカニズム

膝関節は人体の中でも最も複雑な構造を持つ関節の一つであり、その安定性は主に4つの靱帯によって支えられています。これらの靱帯がスポーツ活動や事故などによって損傷すると、膝の機能に大きな影響を与えます。

 

膝関節を支える主要な靱帯は以下の4つです。

  • 前十字靱帯(ACL):膝関節の中心部に位置し、脛骨の前方への動きを制限するとともに、膝の回旋安定性を担っています[3]。
  • 後十字靱帯(PCL):前十字靱帯と交差する形で位置し、脛骨の後方への動きを制限します[3]。
  • 内側側副靱帯(MCL):膝の内側にあり、外側からの力に対して膝を安定させる役割を果たします[3]。
  • 外側側副靱帯(LCL):膝の外側にあり、内側からの力に対して膝を安定させます[3]。

これらの靱帯は、それぞれ特定の動きに対して膝関節を安定させる役割を持っています。靱帯損傷の発生メカニズムは損傷する靱帯によって異なります。

 

前十字靱帯(ACL)損傷の多くは、方向転換時のねじれや着地の際に膝が内側に入る動作(knee-in toe-out)で発生します。バスケットボール、サッカー、スキーなどの競技中に多く見られ、急激な減速や方向転換時に「ポップ音」とともに発生することが特徴です。
後十字靱帯(PCL)損傷は比較的稀ですが、膝を曲げた状態で直接衝撃を受けた場合に発生しやすいです。交通事故でダッシュボードに膝を打ちつけた際に起こる「ダッシュボード損傷」が典型例です。
内側側副靱帯(MCL)損傷は膝の外側から強い力が加わった場合に発生します。接触スポーツや転倒時に多く見られます。
外側側副靱帯(LCL)損傷は最も発生頻度が低く、膝の内側から強い力が加わった場合に発生します。
靱帯損傷は一般的に以下の3段階に分類されます。

  • Grade 1(軽度):靱帯の一部の繊維が伸びているが断裂はない状態
  • Grade 2(中等度):靱帯の一部が断裂し、安定性が部分的に失われた状態
  • Grade 3(重度):靱帯が完全に断裂し、機能を失った状態

複数の靱帯を同時に損傷することもあり、特に前十字靱帯・内側側副靱帯・内側半月板を同時に損傷する「不幸の3徴候(Unhappy triad)」は代表的な複合損傷として知られています。

 

膝靱帯損傷で現れる主な症状と診断方法

膝の靱帯損傷が起こると、損傷した靱帯の種類や損傷の程度によって様々な症状が現れます。受傷直後と時間が経過してからでは症状が変化することも特徴的です。

 

受傷直後の症状:

  • ポップ音:特に前十字靱帯が断裂する瞬間、「ブチッ」という音が聞こえることがあります[1][3]。これは靱帯が切れる音です。
  • 急激な痛み:損傷直後に鋭い痛みを感じることが多く、特にGrade 2、3の損傷では激しい痛みを伴います[1]。
  • 膝くずれ(Giving way):靱帯が切れた瞬間、膝がガクッと崩れるような感覚を体験することがあります[1]。
  • 腫れ:関節内に出血が生じると、数時間から24時間以内に膝全体が腫れあがります(関節内血腫)[1][3]。

時間経過後の症状:

  • 不安定感:特に荷重時や方向転換時に膝がグラつくような感覚があります[1][3]。これは靱帯の重要な機能である関節安定化が失われるためです。
  • 可動域の制限:痛みや腫れにより、膝の曲げ伸ばしが制限されます[7]。
  • 筋力低下:特に大腿四頭筋の筋力が低下することがあります[5]。

各靱帯損傷の特徴的な症状には以下のようなものがあります。

靱帯 特徴的な症状
前十字靱帯(ACL) ・ポップ音と共に膝が崩れる感覚[1]
・関節の不安定感
・急激な方向転換時の痛み
後十字靱帯(PCL) ・膝の後方不安定性[3]
・階段を降りる際の痛み
・ACLに比べて腫れが少ない
内側側副靱帯(MCL) ・膝の内側の痛みと圧痛[3]
・膝を外側に開く動作での痛み
外側側副靱帯(LCL) ・膝の外側の痛みと圧痛[3]
・膝を内側に寄せる動作での痛み

診断方法:
靱帯損傷の診断は主に以下の