α-GI剤と一緒に使っている患者が低血糖を起こしたとき、砂糖を渡すと症状が改善しないまま悪化します。
アマリール錠の一般名はグリメピリドで、薬効分類はスルホニルウレア(SU)系経口血糖降下剤(薬効分類番号:3961)です。製造販売元はサノフィ株式会社で、2000年から国内販売が開始されました。
アマリール錠の規格は0.5mg・1mg・3mgの3種類があり、薬価はそれぞれ0.5mg錠と1mg錠が同額の10.4円/錠、3mg錠が18.7円/錠となっています。他のSU薬や多くの糖尿病治療薬と比べて薬価が低い点が特徴のひとつです。これは安価なだけです。
添付文書の冒頭には「劇薬」「処方箋医薬品」の表示があり、それだけ取り扱いへの注意が求められる薬剤です。本剤はCYP2C9によって主に肝代謝を受け、その代謝物はおもに腎臓から排泄される薬物動態を持ちます。
効能・効果は、「2型糖尿病(ただし、食事療法・運動療法のみで十分な効果が得られない場合に限る)」とされており、1型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)には適応がない点に注意が必要です。つまり適応の確認が前提です。
作用機序としては、膵臓のβ細胞に存在するATP感受性カリウムチャネル(KATPチャネル)にあるSU受容体に結合してチャネルを閉じ、細胞膜を脱分極させてインスリン分泌を促進します。他のSU薬と比較してインスリン分泌促進作用はマイルドですが、肝臓および末梢組織でのインスリン感受性改善作用も加わるため、臨床上は同等以上の血糖降下効果が得られます。日本人は欧米人に比べてインスリン分泌能が元来低い傾向があることから、アマリールの作用機序は日本人の2型糖尿病に適しているとされています。
参考情報として、PMDA(医薬品医療機器総合機構)の医薬品情報も合わせて確認してください。
PMDA アマリール錠 添付文書・審査報告書一覧(医薬品医療機器総合機構)
添付文書に記載された用法・用量は、医療従事者が最も注意すべき項目のひとつです。アマリール錠の投与方法は以下の通りです。
「食前または食後」いずれでもよいとされている点は、患者指導の上で有用な情報です。食前・食後で薬の作用に大きな違いはないため、患者の生活リズムに合わせて服用タイミングを選べます。ただし、患者ごとに指示された服用方法を自己判断で変更しないよう、服薬指導の際には明確に伝える必要があります。
増量に関しては、少なくとも1〜2週間の投与期間をおいて、血糖コントロールの状況を確認しながら増量するのが基本です。患者の状態を十分に観察することが重要ですね。
なお、飲み忘れが発生した際は「1回とばして次の服用時間に1回分を服用する」ことが原則です。2回分を一度に服用すると低血糖リスクが高まるため、この点を患者に必ず説明しておく必要があります。これが基本です。
増量の判断基準として、HbA1cを目安にすることが一般的です。食事療法のみを行いHbA1c 7.0%以上の成人2型糖尿病患者を対象とした臨床試験では、アマリール1〜4mg/日の投与でHbA1cが1.0%以上低下した症例は67.6%、平均値として8.26%から6.94%へと低下したという結果があります。
参考:用法用量の詳細は添付文書原文にてご確認ください。
KEGGデータベース アマリール添付文書情報(医薬品情報)
添付文書の「禁忌」欄は、投与を絶対に行ってはならない患者が列挙されています。禁忌が原則です。アマリール錠における禁忌は以下の通りです。
腎機能障害については注意が必要です。アマリール(グリメピリド)は大部分が肝臓で代謝されますが、その代謝物は腎臓から排泄されます。重篤な腎機能障害では代謝物が蓄積して低血糖リスクが高まることから、禁忌とされています。ただし「重篤でなければよい」ということではなく、程度が軽くても低血糖の可能性は残ります。厳しいところですね。
慎重投与(特に注意が必要な患者群)としては以下が挙げられます。
参考として、腎機能障害時の血糖降下薬の扱いについては以下も有用な情報源です。
東京女子医科大学 糖尿病センター「腎機能障害時の経口血糖降下薬」(DIABETES NEWS No.125)
アマリール錠の最も重大な副作用は低血糖です。添付文書の「警告」欄の冒頭に「重篤かつ遷延性の低血糖を起こすことがある」と明記されており、SU薬全般の中でも特別の注意が求められています。低血糖が原則です。
低血糖の発現頻度は、臨床的には15〜20%とも報告されており、特に投与初期に注意が必要です。低血糖の主な症状は以下の通りです。
低血糖への対処は状況によって異なります。意識障害を伴わない場合は砂糖や糖質を含む食品を摂取させます。ここで重要なのがα-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI薬:アカルボース・ボグリボース・ミグリトールなど)との併用時です。α-GI薬は二糖類の消化・吸収を遅らせる薬剤であるため、砂糖(ショ糖)を摂取しても低血糖の改善が遅れる可能性があります。この場合は必ずブドウ糖(グルコース)を投与しなければなりません。砂糖では対応できないケースがあります。
また添付文書には「低血糖は投与中止後、臨床的にいったん回復したと思われた後も再発することがある」と明記されています。遷延性低血糖の危険性があるため、症状が一度改善したように見えても油断は禁物です。特に高齢者・腎機能障害患者・他の糖尿病薬との多剤併用患者では再発リスクが高く、経過観察を続けることが大切です。
重大な副作用として添付文書に記載されているのは低血糖の他に以下があります。
その他の副作用(主なもの)としては、嘔気・下痢・腹部不快感・発疹・かゆみ・めまい・一過性視力障害なども報告されています。これは把握が必要です。
参考リンク(くすりのしおり 患者向け副作用情報)。
アマリール1mg錠 くすりのしおり(製薬協)
アマリール錠は相互作用の対象薬剤が非常に多く、添付文書の「相互作用」欄は注意が必要な項目が列挙されています。医療従事者にとって確認が欠かせない内容です。
血糖降下作用を増強させる薬剤(低血糖リスクが上がる):
特にβ遮断薬との併用では、低血糖症状の一つである頻脈や振戦などの交感神経症状が隠れてしまい、低血糖の発見が遅れることがあります。これは重大なリスクです。添付文書では「非選択性β遮断薬(プロプラノロール等)は避けることが望ましい」と明記されています。
血糖降下作用を減弱させる薬剤(血糖コントロールが悪化するリスク):
複数科にまたがる処方が行われる患者では、お薬手帳等を通じた情報共有が不可欠です。つまり多職種連携が条件です。特に内分泌疾患(甲状腺・副腎疾患)や感染症で使用されるリファンピシンとの併用では、血糖コントロールの変動が著しくなることがあります。
相互作用リストの詳細はKEGGデータベースでも確認できます。
アマリール相互作用一覧(KEGG MEDICUSデータベース)
アマリール錠の安全管理において、添付文書や行政通知が繰り返し警告しているのが「アルマール」との名称類似による取り違えリスクです。これは医療現場で見落とされがちな危険です。
「アマリール」は経口血糖降下剤(グリメピリド)、「アルマール」は高血圧症・狭心症・不整脈治療剤(アロチノロール塩酸塩)です。薬効が全く異なる薬が、名称の类似から取り違えられてきました。厚生労働省やPMDA(医薬品医療機器総合機構)が公表したデータによれば、両剤の取り違え事例(死亡を含む医療事故事例・ヒヤリハット事例)は日本医療機能評価機構への報告・文献などを合わせて少なくとも15件が確認されています。そのうち死亡に至った事例も含まれていることが報告されています。
取り違えのパターンとしては以下のような事例が記録されています。
こうした事態を受け、サノフィ(当時サノフィ・アベンティス)はアマリールのPTP包装に「糖尿病用薬」と薬効を明記する表示改善を実施しました。また大日本住友製薬はアルマールの販売名変更申請を行いました。医療機関での対策としては、調剤棚への注意喚起シールの貼付、必ず薬歴を確認するシステムの整備、患者が糖尿病患者であることを確認する体制の確立などが推奨されています。
実際に取り違えが起きてしまった場合、糖尿病でない患者にアマリールが投与されると、患者の膵臓からインスリンが分泌され、血糖値が急激に低下して重篤な低血糖状態になることがあります。致命的な結果につながるリスクがあります。医療従事者として、名称が似ている薬剤ペアは特に慎重なダブルチェックが必要です。
関連する厚生労働省の安全情報はこちら。
厚生労働省 医薬品・医療用具等安全性情報No.202「取り違えることによるリスクの高い医薬品」(PMDA)