ナンテンジツの効果と副作用を医療従事者が解説

古来より鎮咳薬として使用されてきたナンテンジツの薬理作用、臨床効果、副作用について詳しく解説します。医療現場での適切な使用法とは?

ナンテンジツの効果と副作用

ナンテンジツの基本情報
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生薬としての位置づけ

メギ科ナンテンの果実を乾燥させた日本薬局方外生薬規格品

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主要成分

ドメスチン、イソコリジンなどのアルカロイド系化合物

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薬効分類

第三類医薬品・鎮咳去痰薬として分類

ナンテンジツの薬理作用と鎮咳効果

ナンテンジツの主要な理作用は、その有効成分であるドメスチンによるものです。ドメスチンは脳の咳中枢に直接作用し、咳反射を抑制する中枢性鎮咳作用を示します。この作用機序により、気道刺激による不快な咳を効果的に鎮めることができます。

 

さらに、ナンテンジツには気管支拡張作用も認められており、これにより呼吸を楽にし、痰の排出を促進します。この二重の作用により、咳症状の根本的な改善が期待できるのです。

 

臨床的には以下の症状に対して効果が認められています。

  • 咳(乾性咳嗽、湿性咳嗽)
  • 喉の炎症による声がれ
  • 喉のあれ・不快感
  • 喉の痛み・腫れ

古来より民間薬として使用されてきた歴史があり、現代においても「南天のど飴」として広く親しまれています。

 

ナンテンジツの安全性と副作用プロファイル

ナンテンジツは第三類医薬品に分類されており、比較的安全性の高い生薬とされていますが、アルカロイド系化合物を含有するため、適切な使用が重要です。

 

報告されている主な副作用は以下の通りです。
皮膚症状

  • 発疹・発赤
  • かゆみ

消化器症状

  • 吐き気・嘔吐
  • 食欲不振

神経系症状

特に注意すべき点として、ナンテンの葉には有毒成分となるアルカロイドが含まれており、ドメスチンを多量に摂取すると知覚や運動神経の麻痺を引き起こす恐れがあります。このため、用法・用量を厳守することが極めて重要です。

 

妊婦または妊娠の可能性がある女性、薬物アレルギーの既往がある患者では、使用前に医師・薬剤師への相談が推奨されています。

 

ナンテンジツ配合製剤の適切な使用法

市販されているナンテンジツ配合製剤の代表例として「南天のど飴」があります。この製剤は1日量9錠中に南天実乾燥エキス500mgを含有しており、以下の用法・用量で使用されます。
年齢別用法・用量

  • 大人(15歳以上):1回3錠、1日3回
  • 8歳以上15歳未満:1回2錠、1日3回
  • 5歳以上8歳未満:1回1錠、1日3回
  • 5歳未満:服用禁止

服用時の注意点。

  • 食間に服用する
  • 1錠ずつ口に含み、噛まずにゆっくり溶かす
  • 1回分服用後は2時間以上の間隔をあける
  • 5~6回服用しても症状が改善しない場合は使用を中止し、医療機関を受診する

製剤には白糖、水飴、ハチミツなどの添加物が含まれており、1錠あたり約7kcalのエネルギーを含有するため、糖尿病患者では注意が必要です。

 

ナンテンジツと他薬剤との相互作用

ナンテンジツ配合製剤使用時には、以下の薬剤との併用を避ける必要があります。
併用禁止薬剤

  • 他の風邪
  • 解熱鎮痛薬
  • 鎮静薬
  • 鎮咳去痰薬
  • 抗ヒスタミン剤含有内服薬(鼻炎用内服薬、乗物酔い薬、アレルギー用薬など)

これらの併用により、副作用のリスクが増大する可能性があります。特に中枢神経系への作用が重複することで、過度の鎮静作用や呼吸抑制のリスクが懸念されます。

 

また、ナンテンジツ配合製剤服用後は、眠気やめまいが生じる可能性があるため、自動車の運転や機械の操作は避けるべきです。

 

医療従事者として患者指導を行う際は、これらの相互作用について十分に説明し、併用薬の確認を怠らないことが重要です。

 

ナンテンジツの品質管理と臨床応用の展望

ナンテンジツは日本薬局方外生薬規格に収載されており、品質管理基準が設けられています。原料となるナンテン(Nandina domestica)の果実は、収穫時期や乾燥方法により有効成分含量が変動するため、標準化された製造工程が重要です。

 

近年の研究では、ナンテンジツの抗炎症作用や抗酸化作用についても注目されており、従来の鎮咳作用以外の薬理効果の解明が進んでいます。これらの研究成果は、将来的な新たな臨床応用の可能性を示唆しています。

 

また、漢方医学的観点からは、ナンテンジツは「肺熱を清し、咳を止める」作用があるとされ、他の生薬との組み合わせによる複合処方での使用も検討されています。

 

医療従事者としては、患者の症状や既往歴を十分に把握した上で、ナンテンジツ配合製剤の適応を判断し、適切な服薬指導を行うことが求められます。特に小児や高齢者では、年齢に応じた用量調整と副作用モニタリングが重要となります。

 

常盤薬品工業の南天のど飴Lの詳細な製品情報
KEGGデータベースによるナンテンジツの薬理学的情報