インコタームズ2020図解pdf付き全11条を一覧で解説

インコタームズ2020を図解・pdf形式でわかりやすく解説。FOBやCIF、EXWなど全11条件の費用負担・リスク移転を一覧で比較。あなたは正しい条件で契約できていますか?

インコタームズ2020の図解と全11条をpdf一覧で徹底解説

CIFで契約したのに、海上事故で荷物が濡れても保険金がほぼ下りないケースがあります。


この記事でわかること
📦
インコタームズ2020の全11条件

EXW・FCA・FOB・CIFなど全条件の費用負担とリスク移転のポイントを図解で整理します。

⚠️
知らないと損するCIF保険の落とし穴

CIFの保険はICC(C)という最低ランク。水濡れや盗難が補償されないことを理解して契約しましょう。

🚢
コンテナ輸送でFOBを使うと損する理由

コンテナ輸送にはFOBではなくFCAが推奨されています。その理由と実務上のリスクを解説します。


インコタームズ2020とは:図解でわかる費用・リスク負担の基本



インコタームズとは、国際商業会議所(ICC)が1936年に制定した「International Commercial Terms」の略称で、貿易取引における費用負担とリスク(危険負担)の分界点を売主・買主間で明確にするための国際ルールです。現在の最新版は2020年1月1日に発効した「インコタームズ2020」で、前回の2010年版から約10年ぶりの改訂となりました。


よく誤解されるのですが、インコタームズは「法律」でも「条約」でもありません。契約当事者同士が「インコタームズ2020を適用する」と合意して初めて有効になるルールです。そのため、契約書には「FOB Yokohama Incoterms® 2020」のように、バージョンを明記することが必要です。


このルールが定めているのは、主に次の3点です。


  • 費用(Cost)の分担:輸送費・通関費・保険料などをどちらが払うか
  • 危険(Risk)の移転:輸送中の紛失・破損などのリスクがいつ買主に移るか
  • 義務の範囲:通関手配や輸送手配をどちらが行うか


一方、インコタームズが定めていない事項も重要です。つまり所有権の移転・代金の支払い方法・契約違反時の責任については、インコタームズの対象外です。この点が実務上のトラブルにつながるケースもあるため、売買契約書と合わせて確認するのが原則です。


インコタームズ2020では、全11条件が以下の2グループに分類されています。


グループ 規則の種類 条件一覧
あらゆる輸送手段に適用 7規則 EXW・FCA・CPT・CIP・DAP・DPU・DDP
海上・内陸水路輸送のみ 4規則 FAS・FOB・CFR・CIF


海上輸送のみ」と「すべての輸送手段」という区分けは、条件選択の大前提になります。コンテナ船を使う場合でも、正しく区分けしないと後述するFOBの問題が生じます。これは覚えておくべき基本です。


参考:JETRO「インコタームズ2020」概要解説ページ
JETROインコタームズ2020解説(貿易・投資相談Q&A)


インコタームズ2020の図解一覧:EXWからDDPまで全11条件の比較

全11条件を、売主(輸出者)の負担が小さい順に並べると理解しやすくなります。売主の負担が一番軽いのがEXWで、一番重いのがDDPです。以下に図解的な一覧を示します。


🟦 あらゆる輸送手段に適用できる7条件


条件 正式名称 通称 リスク移転タイミング
EXW Ex Works 工場渡し 売主施設で買主が受取った時点
FCA Free Carrier 運送人渡し 指定場所で運送人に引き渡した時点
CPT Carriage Paid To 運賃込み渡し 売主指定の運送人に引き渡した時点
CIP Carriage and Insurance Paid To 運賃・保険料込み渡し 売主指定の運送人に引き渡した時点
DAP Delivered at Place 仕向地持込渡し 仕向地で荷卸準備完了の時点
DPU Delivered at Place Unloaded 荷卸込持込渡し 仕向地で荷卸完了の時点
DDP Delivered Duty Paid 関税込持込渡し 仕向地で荷卸準備完了の時点


🟧 海上・内陸水路輸送のみの4条件


条件 正式名称 通称 リスク移転タイミング
FAS Free Alongside Ship 船側渡し 輸出港の船側に置いた時点
FOB Free On Board 本船渡し 本船に積み込まれた時点
CFR Cost and Freight 運賃込み 本船に積み込まれた時点
CIF Cost, Insurance and Freight 運賃保険料込み 本船に積み込まれた時点


各条件をざっくり理解するには「EXW → DDP」と覚えると便利です。EXWに近いほど買主の負担が大きく、DDPに近いほど売主の負担が大きい構造になっています。


各条件の費用負担比較(○:負担あり ✕:負担なし)


費用項目 EXW FCA FOB CIF DDP
輸出梱包
輸出通関
国際輸送
輸送保険 ○(最低限) 任意
輸入通関
関税


この表の「売主の義務列(左)」から右に進むほど、売主のコストは増えていきます。これが基本です。EXWは輸出者にとって最も楽な条件ですが、買主側に輸出通関の知識が必要なため、慣れていない相手との取引では採用しにくい面もあります。


参考:国際貿易における条件別の費用・リスク負担について
内外トランスライン インコタームズ2020 費用・リスク負担の詳細


インコタームズ2020のpdf図解でよく使われるFOB・CIF・FCAの違いと選び方

実務でよく登場するのがFOB・CIF・FCAの3条件です。それぞれの違いを図解的に整理しましょう。


🔷 FOB(Free On Board:本船渡し)


FOBは、売主が指定した船積港で本船に貨物を積み込んだ時点で、費用とリスクが買主に移転します。売主は輸出通関まで手配する義務があります。世界中で長年使われてきた条件で、日本の輸出実務でも伝統的に多用されています。


しかし、コンテナ輸送においてFOBを使うことには問題があります。コンテナ輸送では、貨物はコンテナヤード(CY)に搬入された時点で運送人の管理下に入ります。ところがFOBの定義では「本船への積込完了時点」でリスクが移転するため、CYから本船まで貨物が移動する間、リスクが宙に浮いた状態になってしまうのです。


これが不合理だということです。


🔷 FCA(Free Carrier:運送人渡し)


FCAは、売主が指定された場所で買主の指定する運送人に貨物を引き渡した時点でリスクが移転します。コンテナヤード(CY)での引き渡しに対応しており、現代のコンテナ輸送の実態に即した条件です。ICCもコンテナ輸送にはFOBではなくFCAを推奨しています。


また、インコタームズ2020ではFCAにおけるB/L(船荷証券)発行の問題が改善されました。売主がFCA条件であっても、信用状取引などで船積済みのB/Lが必要な場合、船会社に依頼して「積載済み表示(on board notation)」のあるB/Lを発行してもらえるようになっています。つまり、FCAでもB/L問題はクリアできます。


🔷 CIF(Cost, Insurance and Freight:運賃保険料込み)


CIFは、売主が本船への積み込みまでの費用・輸出通関・国際輸送費・海上保険料を負担する条件です。リスクの移転はFOBと同じく「本船積込完了時点」です。


重要なのは、リスクが移転した後(航海中)に貨物が損傷しても、保険金請求は買主が行う点です。売主は保険を手配しますが、受益者は実質的に買主になります。痛いですね。


比較項目 FOB FCA CIF
リスク移転タイミング 本船積込時 運送人引渡時 本船積込時
コンテナ輸送への適合 ❌ 非推奨 ✅ 推奨 ❌ 非推奨
保険手配義務 なし なし あり(ICC(C))
輸出通関義務 売主 売主 売主
輸入通関義務 買主 買主 買主


長年の慣習からコンテナ輸送にもFOBが使われ続けているのが実情ですが、リスク管理の観点からはFCAへの切り替えを検討する価値があります。


参考:コンテナ輸送と貿易取引条件の関係(JETRO)
JETROコンテナ輸送の貿易取引条件・FCA推奨の理由


インコタームズ2020のCIF保険の落とし穴:図解で理解する保険補償の範囲

「CIF条件で契約しているから、輸送中の損害はすべてカバーされる」と思っている輸入者は少なくありません。これは大きな誤解です。


インコタームズ2020のCIFで売主が付保する義務がある保険は、ICC(C)(協会貨物約款C条件) という最低ランクの保険です。このICC(C)がカバーするのは、火災・爆発・座礁・沈没・衝突などの大事故に限られています。


以下のようなよくある損害はカバーされません。


  • ❌ 水濡れ(雨水・海水の浸入)
  • ❌ 盗難
  • ❌ 破損・擦り傷
  • ❌ 荷崩れ・落下


対して、CIPという条件では、インコタームズ2020の改訂によりICC(A)(最高ランクの補償) が義務付けられました。CIPではほぼすべてのリスクをカバーする保険が自動的に付保されます。


これがCIFとCIPの保険に関する決定的な違いです。


保険条件 カバー範囲 インコタームズ条件
ICC(A) ほぼ全損害(包括担保 CIP(2020版で義務化)
ICC(B) 主要な物的損害 ─(任意選択)
ICC(C) 大事故のみ(限定担保) CIF(最低義務)


CIF契約で輸入している場合、売主が付保するのはICC(C)だけで構わないことになっています。もし水濡れや盗難のリスクが心配な貨物であれば、買主側で別途ICC(A)ベースの保険を付保するか、売主にCIP条件または条件変更(ICC(A)付保)を求める必要があります。


実際、電子機器・精密機器・食品などを輸入する場合はICC(C)では不十分なケースが多くあります。保険内容の確認が条件です。


輸出入保険の具体的な約款・条件については、損保ジャパンなどの保険会社サイトで確認できます。


損保ジャパン:貿易条件と外航貨物海上保険の関係


インコタームズ2020のpdf・図解の活用法:実務で即使える選択フローチャート

インコタームズを理解したら、次のステップは「どの条件を選ぶべきか」の判断です。実務でよく使われる選択フローチャートを以下に示します。


✅ インコタームズ2020 条件選択フローチャート(輸出者目線)


```
① 輸送手段は何か?
├─ 航空便・複合輸送・コンテナ船
│ └─ 「あらゆる輸送手段」グループを選ぶ
│ → EXW / FCA / CPT / CIP / DAP / DPU / DDP
└─ バルク・在来船(海上輸送のみ)
└─ 「海上・内陸水路」グループを選ぶ
→ FAS / FOB / CFR / CIF


② どこまで費用を負担したいか?
├─ 最小限(買主に多く任せる)
│ → EXW または FCA
├─ 輸入港まで(中間)
│ → FOB / CFR / CIF(海上)または FCA / CPT / CIP(複合)
└─ 輸入地の指定場所・関税込みまで
→ DAP / DPU / DDP


③ 保険は誰が手配する?
├─ 売主が手配・費用負担する
│ → CIF(最低限ICC(C)) または CIP(ICC(A)義務)
└─ 買主が自分で手配する
→ FOB / FCA / CFR / CPT など
```


この判断フローを持っておくだけで、条件選択の迷いが減ります。これは使えそうです。


📋 場面別・おすすめ条件一覧


取引パターン 推奨条件 理由
コンテナ輸送・日本から輸出 FCA FOBのリスク問題を回避できる
輸入者が物流を自己管理したい FOB・FCA 自社でフォワーダーを選べる
売主が全部手配したい CIF・CIP 輸送・保険を一括で担う
輸入通関・関税まで売主負担 DDP 買主の手間を最大限省ける
高価値貨物・包括補償が必要 CIP ICC(A)保険が義務付けられている


なお、日本の輸出企業では慣習的にCIF条件を使うケースが多いですが、欧米企業との取引ではFCA・CIPが主流になりつつあります。グローバルな取引では、相手方の慣習も確認することが大切です。


日本の輸出入実務においてインコタームズをどう適用するかについて、東京商工会議所が詳しいガイドを公開しています。


東京商工会議所:知らないと損する貿易取引の基本インコタームズ解説


インコタームズ2020で2010年版から変わった5つのポイント:図解で確認

インコタームズ2020では、2010年版から5つの重要な変更が加えられました。実務に直結する内容なので、順番に確認しましょう。


① DATがDPUに変更(最大の変更点)


インコタームズ2010の「DAT(Delivered at Terminal:ターミナル持込渡し)」が廃止され、新たに「DPU(Delivered at Place Unloaded:荷卸込持込渡し)」が創設されました。DATでは仕向地がターミナルに限定されていましたが、DPUでは「任意の場所」での荷卸しに対応しています。倉庫・工場・建設現場など、ターミナル以外の場所への納品を伴う取引でも適用できるようになりました。


② FCAにおけるB/L(船荷証券)発行の改善


FCA条件でもShipped B/L(積載済み船荷証券)の発行が可能になりました。以前は、FCAを使うと信用状(L/C)取引で必要なB/Lが取れないという実務上の問題がありました。2020年版では、売主の要求があれば船会社が積載済み表示(on board notation)のあるB/Lを発行する仕組みが整備されています。FCAを使うハードルが下がりました。


③ CIPの保険水準がICC(A)に引き上げ


前述のとおり、CIP条件の売主保険義務がICC(C)からICC(A)に格上げされました。一方、CIFはICC(C)のまま据え置きです。CIPは「全リスクカバー」、CIFは「限定カバー」という明確な差がつきました。つまりCIPの方が買主にとって安心な条件ということになります。


④ EXWとFCAで自己輸送手段の活用が明文化


売主または買主が自社のトラック等を使って輸送する場合の規定が明文化されました。物流子会社を持つグループ企業や、自社配送を行うメーカーにとって、責任範囲が明確になる改訂です。


⑤ 各条件に「利用者のための解説ノート」が追加


ICC公式テキストに、各条件の使い方・選び方の解説ノートが追加されました。どの条件をいつ使うべきかのガイダンスが充実したことで、実務担当者が条件を誤解するリスクが減っています。


2010→2020 変更点まとめ一覧


変更内容 2010年版 2020年版
DATの扱い 存在(ターミナル限定) 廃止→DPUに変更(場所自由)
FCAのB/L Shipped B/L取得困難 積載済みB/L取得可能
CIP保険水準 ICC(C) ICC(A)に引き上げ
自己輸送規定 不明確 明文化
解説ノート なし 各条件に追加


インコタームズは今後も改訂が続く可能性があります。最新版を把握しておくことが基本です。


なお、インコタームズ2020の公式テキスト(ICC Japan発行の英和対訳版)は、ICC Japanのウェブサイトから購入できます。原文確認が必要な場面では参照してください。


ICC Japan(国際商業会議所 日本委員会)公式サイト




CISSP公式問題集第2版