あなたの第三国向け申告でも前科がつくことがあります。

対ロシア制裁というと、通関業の現場では「ロシア向けを止めればよい」と考えがちです。ですが実務ではそれだけでは足りません。結論は広く確認です。
経済産業省は、ロシア向けの輸出入禁止措置を累次に拡大し、軍事転用可能品、産業基盤強化品、ぜいたく品、さらに一部輸入品まで幅広く対象化しています。2025年2月時点の資料では、日本の指定対象はロシア559団体、ベラルーシ27団体、第3国側でも中国25団体、トルコ8団体、UAE3団体などに及んでいます。 rief-jp(https://rief-jp.org/ct5/157917)
ここで通関実務に効くのが「ロシアに送っていないから安全」という発想が崩れる点です。東京税関の周知文書でも、ロシア及びベラルーシ以外の国の特定団体への輸出禁止措置が新規導入され、UAE2団体、アルメニア1団体、シリア1団体、ウズベキスタン2団体などが対象と明記されています。 jp.reuters(https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/KFTRDJZMCVLEZLADTHYOA3YZI4-2025-01-10/)
つまり、船積地や仕向地だけで安心できないということです。書類の表面上は第三国向けでも、相手先や最終需要者の実態次第でアウトになりえます。これが原則です。
通関士や申告担当にとってのデメリットは明確です。貨物を止めるか進めるかの判断が遅れると、保管料や再申告対応、顧客説明の時間が一気に膨らみます。厳しいところですね。
制裁対象かどうかの一次確認では、経産省の制裁ページとCISTECの整理表を先に当てるだけでも精度が上がります。場面は「申告前の品目・相手先確認」、狙いは「差し戻し回避」、候補は「経産省ページをブックマークして毎案件で照合」です。 rief-jp(https://rief-jp.org/ct5/157917)
ロシア制裁の対象整理に使える経産省の総合ページです。指定品目・指定団体の確認に向いています。
経済産業省 対ロシア等制裁関連ページ
品目の線引きは、感覚で覚えると危険です。数字で押さえる方が早いです。つまり範囲が広いです。
経産省資料では、禁止対象は工作機械、炭素繊維、高性能半導体のようなレジーム品だけではありません。半導体、コンピュータ、通信機器、ロボット、レーザー溶接機、3Dプリンター、貨物自動車、ブルドーザ、1900cc超の自動車、自動車用エンジンオイル、特殊車両のエンジン・部品など、一般の取引で見かける物まで含まれます。 rief-jp(https://rief-jp.org/ct5/157917)
2025年1月の追加措置では、クレーン車などの特殊車両のエンジンや部品、小型自動二輪車、音響機器、工具など335品目が新たに輸出禁止となり、累計1829品目が輸出禁止になったと報じられました。 jp.reuters(https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/KFTRDJZMCVLEZLADTHYOA3YZI4-2025-01-10/)
この数字は大きいです。通関現場では「機械類は危ないが、工具や音響機器は盲点」というケースが起こりやすいからです。意外ですね。
さらに、Common High Priority Items Listは計50品目で、Tier1からTier4までの4区分に分かれています。集積回路4品目、通信用途機器5品目、電子機器16品目、機械部品や光学機器9品目、半導体製造関連11品目、工作機械関連5品目という構成です。 rief-jp(https://rief-jp.org/ct5/157917)
この50品目は、ロシア向け直送でなくても注意度が高い領域です。輸出先が第三国でも、用途・需要者・数量・支払者が不自然なら、制裁回避の疑いで見られます。50品目だけ覚えておけばOKです。
実務上のメリットは、HSコードと品名だけでなく、用途と需要者の業態まで確認する習慣がつくことです。場面は「機械・電子部品案件の受付時」、狙いは「後戻り防止」、候補は「受付票に用途・最終需要者欄を1つ追加する」です。
2025年1月追加の概要を把握しやすい記事です。直近の品目拡大の感覚をつかめます。
ロイター 日本政府、対ロシアで追加制裁
「例外があるなら出せる」と考えるのは危険です。原則は逆です。結論は原則不承認です。
経産省資料では、ロシア向け貨物は輸出承認対象で、原則として承認しないとされています。そのうえで、食品・医薬品、人道支援、サイバーセキュリティ、海洋安全、消費者向け通信機器、民間向け通信インフラ、政府間協力、日本や指定国資本100%出資法人向け、エネルギー安全保障上必要なものなど、9類型で承認されることがあると示されています。 rief-jp(https://rief-jp.org/ct5/157917)
ここで大事なのは、「例外だから自由に出せる」ではなく「例外候補でも確認が必要」という点です。特に通関で怖いのは、荷主が“医療用だから大丈夫”“スマホだから問題ない”と口頭で言い切ってくる場面です。確認が条件です。
しかも税関文書には、施行日以降に積載・搭載されるものから適用対象となると明記されています。つまり、契約日ではなく実際の積載タイミングが効く場面があります。 jp.reuters(https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/KFTRDJZMCVLEZLADTHYOA3YZI4-2025-01-10/)
これは納期が詰まった案件ほど危ないです。前日に条件が変わるだけで、出せるつもりだった貨物が止まります。痛いですね。
一方で、例外を正しく使えれば、不要な差し止めも減らせます。あなたが確認すべきなのは、品目名よりも「最終需要者」「用途」「出資関係」「積載日」です。つまり4点確認です。
ロシア向け輸出承認の例外が整理された経産省資料です。例外の誤解を防ぐのに役立ちます。
経済産業省 対ロシア制裁のリスクと対応の必要性
いちばん誤解されやすいのがここです。第三国向けでも安心ではありません。つまり迂回輸出が焦点です。
経産省は、ロシア制裁回避を狙う迂回輸出に強く注意を促しており、レッドフラグとして、最終需要者が決まっていない、運送業者が最終仕向先になっている、2022年2月以降に突然引き合いが来た、注文量が急増した、輸送ルートが不明瞭、全額前払いなど11項目を挙げています。 rief-jp(https://rief-jp.org/ct5/157917)
さらに具体例として、UAE経由の自動車部品流通や、タイ法人を経由してロシア子会社に機械部品を送るケースが紹介されています。営業現場と法務部の連携不足が問題化した事例まで示されており、通関部門だけで抱えると破綻しやすい論点です。 rief-jp(https://rief-jp.org/ct5/157917)
読者の常識では「申告先がUAEやタイなら、まずは通常の貿易審査でよい」となりがちです。ですが現実には、第三国の特定団体向け禁止があり、しかも再販売を知りながら第3国に輸出した場合は刑事罰の可能性、過失でも行政制裁の可能性があると明記されています。 jp.reuters(https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/KFTRDJZMCVLEZLADTHYOA3YZI4-2025-01-10/)
ここは重要です。通関業者にとっての損失は、単なる1件の差し止めでは終わりません。社内調査、顧客対応、再発防止策、金融機関や取引先からの信用低下まで連鎖します。法的リスクに注意すれば大丈夫です。
案件を一つで終わらせる対策なら、怪しい第三国案件だけ「最終需要者確認メモ」を残す運用が現実的です。場面は「UAE・トルコ・中国・中央アジア向けの機械部品案件」、狙いは「後で説明できる状態を作ること」、候補は「受付時に確認項目を3つだけ定型化してメモする」です。
罰則は抽象論ではありません。実際に判決が出ています。これは見逃せませんね。
経産省資料が引用する2024年10月31日の日経報道では、大阪地裁が、軍事転用のおそれがある水上バイクや船舶エンジン、中古バイクなど計27点、約4200万円相当を韓国・釜山向けと虚偽申告してロシアへ輸出した事案で、被告に懲役3年・執行猶予4年、法人に罰金500万円の有罪判決を言い渡したとされています。 rief-jp(https://rief-jp.org/ct5/157917)
通関業の独自視点で見ると、この事例の怖さは「ロシア向けの堂々たる申告」ではなく、「第三国向けに見せた虚偽申告」で摘発されている点です。つまり、現場で見えているB/Lやインボイスの顔つきだけでは足りない、ということですね。
しかも経産省は、取引前に制裁対象企業を検索サイトやガイドラインでチェックすることを、海外子会社や代理店にも推奨しています。これは荷主本体だけでなく、系列販売先や現地代理店まで含めた確認が期待されているという意味です。 rief-jp(https://rief-jp.org/ct5/157917)
さらに、米国側では非米国企業にも巨額罰金の例があり、2023年にはシーゲイトUSとシンガポール法人に3億ドル、約450億円の罰金が課されたと経産省資料にあります。日本法対応だけで終わらない可能性があるわけです。 rief-jp(https://rief-jp.org/ct5/157917)
つまり、通関業者の価値は「申告を通す速さ」だけではありません。「止める判断を言語化できるか」が利益を守ります。結論は記録力です。
疑義案件では、相談先を抱えておくと動きやすいです。場面は「貨物は一般品だが相手先や支払者が不自然な案件」、狙いは「独断で進めないこと」、候補は「税関の通関総括部門や経産省窓口に事前相談する」です。 jp.reuters(https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/KFTRDJZMCVLEZLADTHYOA3YZI4-2025-01-10/)
東京税関の相談先が載っている案内です。輸出入手続と貿易管理令関係の窓口が分かれています。
東京税関 ロシアに対する輸出入の禁止措置に伴う対応について