SCFIのチャートが上がっていても、あなたの担当荷主には運賃値上げが来ないケースがあります。

通関業務において、コンテナ運賃の変動を把握することは荷主への情報提供や輸送コスト予測に直結します。現在、世界で広く使われているコンテナ運賃指数は主に4種類あります。
| 指数名 | 発表元 | 更新頻度 | 対象範囲 |
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| SCFI(上海輸出コンテナ運賃指数) | 上海航運交易所 | 毎週金曜日 | 上海発スポット運賃・15航路 |
| CCFI(中国輸出コンテナ運賃指数) | 上海航運交易所 | 毎週金曜日 | 中国主要10港発・12航路(スポット+契約) |
| FBX(Freightos Baltic指数) | バルチック海運取引所×Freightos | 日次 | 世界12航路のスポット運賃 |
| WCI(世界コンテナ指数) | Drewry社 | 週次 | 世界8航路の40フィートコンテナ運賃 |
チャートを読む際の基本は「水準」と「方向性」の2点です。 指数の絶対値だけを見て「高い・低い」と判断するのは危険で、前週比や前年同期比との比較が必要です。たとえばSCFIは2026年5月22日時点で2,218ポイントですが、コロナ禍の2022年初頭には5,000ポイントを超えていた時期もあるため、現在は歴史的には中程度の水準といえます。 jp.tradingeconomics(https://jp.tradingeconomics.com/commodity/containerized-freight-index)
SCFIとCCFIはともに上海航運交易所が発表しますが、性格が大きく異なります。これが意外に知られていません。
SCFIは上海港発のスポット運賃のみを集計した指数で、2009年に公表開始されました。 一方、CCFIは中国の大連・天津・青島・上海・寧波・深センなど10の主要ハブ港を対象とし、スポット運賃に加えて長期契約運賃も含んで算出されます。 つまりCCFIのほうが変動が穏やかで、長期的なトレンド把握に向いています。 lanes(https://lanes.info/scfi-shanghai-container-freight-index-supply-chain-explained/)
SCFIはCCFIより先行性が高く、市場の動向をよりリアルタイムに反映するという特徴があります。 実務的には、急な運賃変動を察知したいならSCFI、荷主との長期的な価格予測を議論するならCCFIが適しています。これが基本の使い分けです。 nikkei225fut(https://nikkei225fut.jp/historical/container_ship_fare?period=all)
なお、FBX指数はISOCO(国際証券監督者機構)準拠の監査済み指数であり、金融取引の基準となるほどの信頼性があります。 ヘッジや保険の検討が必要な大口荷主への説明にはFBX指数の参照が適切です。
チャートを長期的に見ると、1年を通じた季節サイクルが確認できます。これを知らないと、通常の季節変動を「異常事態」と誤認するリスクがあります。
コンテナ運賃の代表的な季節パターンは以下のとおりです。
- 1〜2月:旧正月前後に中国からの輸出が急増し、一時的に運賃が上昇しやすい(ただし春節期間中は上海航運交易所自体が非公表日を設けることもある)
- 5〜7月:欧米向けの夏の繁忙期前に荷動きが増え、運賃が上昇しやすい。2024年は5月初旬からSCFIが急上昇し、7月中旬にピークを付けた
- 10〜12月:クリスマス需要が一服し、需給が緩んで運賃が下がりやすい傾向がある
ただし、地政学リスクやサプライチェーン混乱が発生すると、季節パターンは大きく崩れることがあります。過去のパターンに縛られすぎるのは禁物です。
実務上のポイントは、6〜8月の繁忙期前に荷主へ早めに輸送計画を促すことです。 2024年の実績では、欧州向けのヨーロッパ輸入業者が通常より早い10月初旬のゴールデンウィーク前に貨物輸送を完了させようと前倒し発注を始めた、という事例が報告されています。
2023年末から2024年にかけての紅海危機は、コンテナ運賃指数に劇的な影響を与えた典型例です。チャートを通じてその過程を振り返ることは、次回の危機対応に直結します。
2023年10月以降、イエメンのフーシ派が紅海・アデン湾で商船を攻撃し始めたことで、多くのコンテナ船がスエズ運河を通らずアフリカ喜望峰回りに航路変更しました。 これにより航行距離と日数が大幅に増加し、実質的な船腹の供給が逼迫。SCFIは2023年末から2024年中頃にかけて約2倍に跳ね上がりました。 lanes(https://lanes.info/scfi-shanghai-container-freight-index-supply-chain-explained/)
チャートを航路別に分解するとさらに重要な情報が得られます。 2026年5月22日時点のCCFI航路別データでは、ペルシャ湾/紅海航路が2,332ポイントと他の航路を圧倒しており、中東情勢の影響が現在も続いていることがわかります。 一方、日本航路は960ポイントと比較的落ち着いており、航路ごとの温度差が一目でわかります。
地政学リスクをチャートで察知するコツは、特定航路の指数だけが突出して上昇している局面を見逃さないことです。 全体指数が穏やかでも、一部航路が急騰しているケースでは、その航路に依存する荷主への早期警戒情報の提供が価値を持ちます。
参考情報(航路別CCFIの最新データ)。
コンテナ運賃指数(FBX指数・WCI指数・CCFI指数・SCFI指数)推移とチャート|株式マーケットデータ
通関業従事者にとって見落としがちな視点が、運賃指数と輸入物価・CIF価格の関係です。この理解があると、荷主の輸入コスト試算の精度が高まります。
コンテナ運賃が上昇すると、仕入れコストの一部である海上運賃が増加し、CIF(運賃・保険料込み)価格が上昇します。 結果として輸入品の国内卸売・小売価格が引き上げられやすく、インフレ圧力になるとされています。 コロナ禍の2021〜2022年にかけてSCFIが5,000ポイントを超えた時期に、日本でも輸入物価の大幅な上昇が記録されたのはその象徴的な例です。
一方、日本郵船(9101)・商船三井(9104)・川崎汽船(9107)の株価はコンテナ運賃指数と強い連動性があります。 運賃指数チャートと海運株の比較チャートを定期的に確認することで、大手海運会社の業績変化を先行きとして読むことができます。これは荷主企業が「どの船社に運賃交渉をしやすい時期か」を考える材料にもなります。
コンテナ運賃指数と輸入物価の関係を詳しく解説した資料として、公益財団法人 日本マクロ経済研究センターによる以下のレポートが参考になります。
コンテナ運賃の指標と物価に与える影響の整理|日本マクロ経済研究センター(PDF)
ここまで指数の種類・季節性・地政学リスクを解説してきましたが、通関実務に直結する活用方法として、「指数の水準より変化速度(モメンタム)を追う」という視点が有効です。あまり語られない論点です。
たとえば2026年5月22日週は、SCFIが前週比+3.62%(2,218ポイント)、WCIが前週比+6.20%(2,711ドル)と急伸しました。 水準だけ見ると「中程度」ですが、複数指数が同じ方向に加速している局面は注意が必要です。これは実際の荷動き増加か、船腹抑制(欠航増加)のどちらかを示すサインです。
以下の3ステップが実務向けの活用法です。
1. 🗓️ 毎週金曜日にSCFI・CCFIをチェック:上海航運交易所が毎週金曜日に公表します(中国の祝日を除く)。2026年の公表日カレンダーも事前に確認しておくと便利です
2. 📐 前週比と前年同期比を必ず比較:水準よりも「変化の方向と速さ」が実務判断に直結します
3. 🌍 航路別データで荷主ごとに絞り込む:日本向け(CCFI)と欧州向けや北米向けでは動きが全く異なります。2026年5月22日時点では南米向けが前週比+7.2%と最大の上昇率を記録するなど、航路差が大きい状況です
コンテナ運賃の変化速度が大きくなってきた場合、荷主への連絡タイミングを早めるのが賢明です。 荷主側も多忙なため、「来週から上がるかもしれない」という情報提供こそが最大の付加価値になります。
指数の最新チャートをまとめて確認できるサービスとして、SCFIとCCFIの両方を航路別に参照できる下記ページが便利です。
コンテナ船運賃SCFI CCFI指数の推移チャートと時系列|日経平均・NYダウのサイト