原産地判定の付加価値基準を通関実務で正しく使う方法

原産地判定における付加価値基準(VAルール)は、EPAや協定ごとに計算式・しきい値・保管書類が異なります。通関業従事者が現場でミスなく運用するために必要な知識を網羅的に解説。あなたは本当に正しい方式で計算できていますか?

原産地判定の付加価値基準を通関実務で正しく使う方法

付加価値率40%を超えていても、「不十分な作業」規定に該当すると原産品と認められず、EPA関税が剥奪されます。


📋 この記事の3つのポイント
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計算方式は協定ごとに全く異なる

控除方式・積上方式・MaxNOM方式など、同じ「RVC 40%」でも協定によって計算式・価額基礎が異なります。混同が最多ミスの原因です。

⚠️
しきい値には品目ごとの例外がある

「RCEP は RVC 40%」と記憶していても、品目別規則(PSR)に独自の例外値が存在します。PSR未確認のまま証明書を発行するとペナルティのリスクがあります。

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書類保管期間は協定で異なる

RCEP は3年、日EU EPA は4年など、協定ごとに証拠書類の保管期間が定められています。期間不足は事後検認時に深刻な問題となります。


原産地判定における付加価値基準(VAルール)の基本的な仕組み



付加価値基準とは、産品の生産過程においてある国で十分な付加価値が加えられた場合に、その国を原産地として認める仕組みです。 英語では「VA(Value Added)ルール」と呼ばれますが、協定によって名称が変わります。日メキシコEPAでは「RVCルール」、日ベトナムEPAでは「LVCルール」と記載されており、同じ概念でも呼び方が統一されていません。 tarifflabo(https://www.tarifflabo.com/tariff/va-rules/)


意外ですね。 名前が違うだけで実務担当者が別の基準と勘違いするケースは少なくありません。


核心は「閾値(しきい値)」を超えるかどうかです。 多くの協定では「40%以上」という数値が基準になっており、この割合を超えれば原産性が認められます。 ただし重要なのは、付加価値率を正確な小数まで計算する必要はなく、「閾値を超えたかどうか」だけが判断基準になるという点です。 global-scm(https://global-scm.com/blog/?p=3020)


判定対象となる産品のHSコード(6桁)を確定させ、品目別規則(PSR)から計算式・価額の基礎・しきい値を読み取ることがスタート地点になります。 PSR の確認をスキップしてしまうと、汎用的な「40%」という数字で判断してしまい、品目固有の例外を見落とす原因になります。これが基本です。 global-scm(https://global-scm.com/blog/?p=3020)


協定名 主な呼称 代表的なしきい値 価額の基礎
RCEP RVC 40%以上 FOB
CPTPP RVC / NC 45〜60%(品目による) FOB / 純費用
日EU EPA MaxNOM / RVC MaxNOM ≦ 50% または RVC ≧ 55% EXW / FOB
日インドCEPA QVC 35%以上 FOB
日スイスEPA VNM 非原産材料 ≦ 60%(EXW比) EXW
日チリEPA RVC(TV) 控除方式45% / 積上方式30% 取引価格


global-scm(https://global-scm.com/blog/?p=3020)


原産地判定の付加価値基準における3つの計算方式

計算方式は大きく「控除方式」「積上方式」「非材料費からのアプローチ」の3種類に分かれます。 日本が締結している協定では、どの方式を使うかは協定ごとに定められており、複数の方式が選択できる場合もあります。 tarifflabo(https://www.tarifflabo.com/tariff/va-rules/)


① 控除方式(Build-down)


最も多くの協定で採用されている方式です。 計算式は「(輸出産品のFOB価額 — 非原産材料のCIF価額)÷ 輸出産品のFOB価額 × 100」となります。 例えばFOB 100,000円の産品に対して非原産材料が55,000円であれば、RVC = (100,000 − 55,000)÷ 100,000 × 100 = 45%となり、RCEP の 40%基準を満たします。 tarifflabo(https://www.tarifflabo.com/tariff/va-rules/)


② 積上方式(Build-up)


原産材料の価額と非材料費(労務費・製造経費・利益など)の合計を積み上げる方式です。 控除方式では基準を満たせない場合でも、積上方式なら基準を達成できるケースがあります。日チリEPAがその典型例で、控除方式では44%と基準未達でも、積上方式なら33%で基準達成(積上しきい値 30%)となる場合があります。 これは使えそうです。 global-scm(https://global-scm.com/blog/?p=3020)


③ 非材料費からのアプローチ


全材料費を差し引くため、原産材料と非原産材料の区分が不要になる、もっとも計算が簡単な方式です。 計算式は「(輸出産品の価額 — 材料費合計)÷ 輸出産品の価額 × 100」となります。 もしこの結果がしきい値を下回った場合は、価額の大きい原産材料をいくつか追加確認することで閾値を超えられる可能性があります。 tarifflabo(https://www.tarifflabo.com/tariff/va-rules/)


非原産材料の価額は「そのCIF価格」が原則ですが、国内から仕入れていてCIF価格が不明な場合は、仕入先との取引価格を代用することが認められています。 原産であることの確認が取れない材料は、保守的に「非原産」として計算するのが安全です。これが原則です。 tarifflabo(https://www.tarifflabo.com/tariff/va-rules/)


原産地判定で通関業従事者がよく犯す付加価値基準のミス

実務でのミスは大きく5つのパターンに集約されます。 global-scm(https://global-scm.com/blog/?p=3020)


- 🔴 価額基礎の混同:日スイスEPAをFOB基準で計算してしまう(正しくはEXW基準)、日EU EPAでEXW/FOBを取り違えるなど、価額の土台自体を間違えるケースです。


- 🔴 しきい値の思い込み:「RCEP は 40%」と記憶したまま、品目固有のPSRで異なるしきい値が設定されていることを確認しないケースです。


- 🟡 付属品・梱包の計算除外:多くの協定でRVC計算に含める規定があるにもかかわらず、計算から除外してしまいます。見落としやすい箇所です。


- 🟡 計算方式の誤用:CPTPPのFV方式で、指定外の非原産材料まで計算に含めてしまうパターンです。


- 🟠 記録保存期間の不足:RCEP では3年、日EU EPA では4年と協定ごとに保管年限が異なります。 期間を混同して書類を破棄してしまうと、事後の検認調査で証明できなくなります。 global-scm(https://global-scm.com/blog/?p=3020)


特に深刻なのが「RVC割れ」です。 サプライヤーの変更や為替レートの変動によって、以前は40%を超えていたRVCが基準を下回ることがあります。一度発行した原産地証明書の根拠が失われるため、定期的な見直し体制が不可欠です。 global-scm(https://global-scm.com/blog/?p=3020)


経済産業省のガイドラインでは、計算に使った証憑(部材購入伝票・製造工程図・サプライヤーからの声明書)を整理して電子データでパッケージ化しておくことを推奨しています。 後から作るのではなく、出荷前に1枚のサマリー資料として準備しておくことが、当局対応時の最も強力な防御手段になります。 youtube(https://www.youtube.com/watch?v=MnFH_na0-fg)


原産地規則の事後検認に関する最新動向(2026年版)はこちらが参考になります。
2026年1〜2月に押さえる主要国の原産地検証(検認)と罰則動向(YouTube)


付加価値基準の原産地判定における「不十分な作業」規定の落とし穴

多くの通関業従事者が見落としやすいのが「原産資格を与えることにならない作業(不十分な作業)」の規定です。 これは、たとえ付加価値率の閾値を超えていても、実質的な変更を伴わない加工しか行われていない場合は原産品と認められないという規定です。 aog-partners(https://aog-partners.com/epatekiyouhiisiteki/)


厳しいところですね。 具体的には以下のような作業が「不十分な作業」に該当します。 aog-partners(https://aog-partners.com/epatekiyouhiisiteki/)


- ✕ 単なる希釈・混合・洗浄・乾燥
- ✕ 輸送や保管のための包装・再包装
- ✕ 単純な組立(ねじ止め・接着など実質的変更のないもの)
- ✕ HSコードが変わる程度の変更でも、加工内容が表面的なもの


日タイEPAの第31条はこの典型的な規定例として知られており、対象となる作業リストが明示されています。 実務での確認手順は「① 付加価値率の計算 → ② 不十分な作業規定の確認」の順で必ず両方を行う必要があります。どちらかだけでは判定が完結しません。 tarifflabo(https://www.tarifflabo.com/tariff/va-rules/)


付加価値率が基準を超えているかどうかだけで判断してしまうと、後から「認定取り消し」となるリスクがあります。 優先順位として「不十分な作業に該当していないか」を先に確認してから、付加価値率の計算に進む手順のほうが効率的です。両方が条件です。 aog-partners(https://aog-partners.com/epatekiyouhiisiteki/)


経済産業省の原産性判断の基本的考え方と保存書類の例示(公式資料)はこちらで確認できます。
原産性を判断するための基本的考え方と整えるべき保存書類の例示(経済産業省 PDF)


原産地判定のための付加価値基準:デミニミス規定と累積の活用で有利に判定する実務テクニック

付加価値基準をクリアするための「プラスアルファの知識」として、デミニミス規定と累積規定は特に重要です。 この2つを知らずに諦めているケースが、実務では相当数あります。 global-scm(https://global-scm.com/blog/?p=3020)


デミニミス(僅少の非原産材料許容ルール)


非原産材料のうち、ごく少量であれば関税分類変更基準(CTC)を満たさなくても原産品と認められるルールです。 多くの協定では、産品のFOB価額の10%以内の非原産材料について、HSコードの関税分類変更基準を満たしていなくても許容されます。 global-scm(https://global-scm.com/blog/?p=3020)


累積(Accumulation)


FTA・EPA の締約国同士であれば、相手国から輸入した原産材料を「自国の原産材料として扱う」ことができるルールです。 たとえばRCEPでは、ベトナムで調達した原産材料を日本の工場で加工する際に、ベトナム原産材料を日本国内の原産材料としてカウントできます。これにより付加価値率が大きく改善するケースがあります。 global-scm(https://global-scm.com/blog/?p=3020)


実際の判定フローをまとめると以下のようになります。


  1. 輸出産品のHSコード(6桁)を確定する
  2. 対象協定の品目別規則(PSR)を確認し、計算式・しきい値・価額基礎を読み取る
  3. 「不十分な作業」規定に該当しないかを確認する
  4. 非原産材料の価額(CIF原則)を収集する
  5. 控除方式または積上方式で計算し、しきい値と照合する
  6. デミニミス・累積規定の適用可能性を確認する
  7. 証拠書類を整備し、協定所定の期間(RCEP:3年、日EU EPA:4年)保管する


aog-partners(https://aog-partners.com/epatekiyouhiisiteki/)


EPA原産地規則の詳細な公式マニュアル(税関)はこちらで確認できます。
EPA 原産地規則マニュアル(税関 PDF)


付加価値率を計算するための実務的な計算演習ツールとしては、JETROが提供するEPA原産地証明支援資料が整理されており、輸出側の実務担当者や通関士試験の勉強にも活用できます。
付加価値基準による計算方法(JETRO PDF)






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