ビソルボン錠販売中止で知るべき代替薬と切替え対応

ビソルボン錠4mgはサノフィが2021年12月に販売中止。後発品の供給不安も重なる中、医療従事者はどう対応すべきか?代替薬の選び方と切替え時の注意点を解説します。

ビソルボン錠販売中止の背景と代替薬・切替え対応を解説

ビソルボン錠に切り替えても、後発品に切り替えても処方が止まるリスクがあります。


🔍 この記事のポイント3選
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ビソルボン錠の販売中止スケジュール

錠剤は2021年12月に製造販売中止、経過措置は2022年3月末まで。さらに吸入液・注も2024年12月に販売中止、経過措置は2025年3月末まで完了。すべての剤形が市場から消えた。

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後発品への切替えが思ったよりも難しいワケ

日医工の行政処分(2021年)により後発品「ブロムヘキシン塩酸塩錠」の供給が一時ストップ。先発品の販売中止と後発品の供給不安が同時に発生した、業界的にも異例の状況だった。

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代替薬は「作用機序の違い」を意識して選ぶ

カルボシステイン(ムコダイン)・アンブロキソール(ムコソルバン)・後発品ブロムヘキシン塩酸塩錠は、それぞれ作用機序が異なる。患者の病態に合わせた選択が重要で、単純な一律置換はリスクを伴う。


ビソルボン錠販売中止の経緯と時系列まとめ



ビソルボン錠4mg(一般名:ブロムヘキシン塩酸塩錠4mg)は、サノフィ株式会社が長年にわたって製造販売してきた気道粘液溶解剤です。2020年11月5日、サノフィは「諸般の事情」を理由に販売中止を告知し、医療現場に大きな波紋を呼びました。実施日(製造販売中止)は2021年12月1日、経過措置満了は2022年3月31日です。


つまり、2022年3月末をもって保険請求が実質的に不可となりました。


この「諸般の事情」という表現は医品業界でよく使われる建前的な言い回しですが、実態は採算性の低下が最大の背景と見られています。ブロムヘキシン塩酸塩は後発品が複数存在し、薬価5.80円/錠という極めて低い水準にまで落ち込んでいました。後発品が普及した先発品が採算ラインを下回り、製造を維持するメリットが消滅したというのが実情です。


さらに時系列を追うと、ビソルボンをめぐる問題は錠剤だけにとどまりませんでした。2024年6月にサノフィは「ビソルボン吸入液0.2%」と「ビソルボン注4mg」についても販売中止を発表しました。理由は「原薬の調達が困難になったため」とされ、経過措置満了は2025年3月31日。これにより、ビソルボンという商品名を持つすべての剤形が市場から消えたことになります。


製品名 販売中止実施 経過措置満了 中止理由
ビソルボン錠4mg 2021年12月 2022年3月31日 諸般の事情(採算性)
ビソルボン吸入液0.2% 2024年12月 2025年3月31日 原薬調達困難
ビソルボン注4mg 2024年12月 2025年3月31日 原薬調達困難


対応が後手に回った施設では、在庫が尽きた時点で突然の処方変更を迫られるケースがありました。経過措置の期限管理は薬剤部の重要な業務のひとつです。これが基本です。


参考リンク(ビソルボン全剤形の販売中止告知。サノフィ公式情報)。
ビソルボン販売中止のお知らせ |サノフィ


ビソルボン錠販売中止に拍車をかけた日医工問題と後発品の供給不安

ビソルボン錠が販売中止になる過程で、医療現場をより深刻な状況に追い込んだのが、後発品メーカーである日医工株式会社の問題です。日医工は2020年4月〜2021年1月にかけて、国の承認を得ていない工程があったことなどを理由に、富山第一工場で製造する75品目を自主回収しました。さらに2021年3月、富山県から業務停止命令(15日間)が科され、後発品の製造・供給が大幅に滞りました。


この影響は甚大でした。


ブロムヘキシン塩酸塩錠4mg「日医工」が供給停止となり、一部の医療機関では後発品への切り替えが事実上不可能な状態に陥ったのです。そのため、「先発品の販売中止が迫っているのに、後発品も手に入らない」という二重の供給リスクに直面した薬剤部が続出しました。その結果、岐阜薬科大学附属薬局のように「先発品ビソルボン錠に一時切り戻して運用し、その後ブロムヘキシン製剤そのものの院内採用を中止する」という判断をとった施設もあります。


後発品市場では2021年以降、日医工以外のメーカーも製造キャパシティや原薬確保に問題を抱えており、ブロムヘキシン塩酸塩錠の安定供給の見通しは長期間立たない状況でした。厚生労働省の令和7年度薬価改定資料でも、ブロムヘキシン塩酸塩の後発品は依然として品目数が少なく(3品目)、安定供給面で脆弱な成分群のひとつとして挙げられています。


薬剤師にとって重要な教訓があります。先発品と後発品が同時に供給困難に陥るシナリオは、採算性の低い後発医薬品では現実に起こり得る、ということです。こうした事態を未然に把握するには、医薬品供給状況データベース(DSJP)などを定期的にチェックする習慣が役立ちます。


  • 📌 DSJP(医療用医薬品供給状況データベース):各社の出荷調整・販売中止情報をリアルタイムで確認できる無料のデータベース。薬剤部での定期モニタリングに活用できる。
  • 📌 厚生労働省の不採算品再算定・供給確保対策資料:薬価改定の度に公表される。供給リスクの高い成分群を事前に把握できる。


参考リンク(ビソルボン錠4mgの販売中止告知日・実施日・在庫消尽後の扱いを確認できるデータベース)。
ビソルボン錠4mg |DSJP 医療用医薬品供給状況データベース


ビソルボン錠販売中止後の代替薬一覧と選択基準

ビソルボン錠の販売中止後、代替薬として検討すべき主な選択肢は3つのカテゴリーに分かれます。まず「同成分の後発品」、次に「異なる作用機序の去痰薬」、そして「注射・吸入の場合の別成分製剤」です。


これが原則です。


① 同成分の後発品(ブロムヘキシン塩酸塩錠4mg)


同一有効成分であるため、薬効の変動リスクが最も低い選択肢です。現在流通しているブロムヘキシン塩酸塩錠4mgの後発品には、「トーワ(東和薬品)」「イセイ(コーアイセイ)」などがあります。なお「レベルボン錠4mg(東和薬品)」は同社が製造販売するブロムヘキシン塩酸塩錠の商品名版です。ただし前述のとおり供給が不安定な時期があったため、採用前に必ず供給状況を確認することが必要です。


② カルボシステイン(ムコダイン錠など)


カルボシステインは「気道粘液修復薬」と呼ばれ、痰の構成成分であるムチン中のシアル酸とフコースの比率を正常化します。痰の量自体を抑える作用を持ち、慢性副鼻腔炎・中耳炎を合併する患者に特に有用です。ブロムヘキシンとは作用機序が異なりますが、去痰という目的では代替可能な場面が多くあります。後発品も豊富で、供給安定性という観点でも選びやすい薬剤です。


③ アンブロキソール(ムコソルバン錠など)


アンブロキソールは「気道粘液潤滑薬」に分類されます。肺サーファクタントの分泌を促進し、線毛運動を活性化させることで痰の排出を助けます。痰の性状にかかわらず排出を促す効果があり、術後の喀痰困難症や手術後の去痰にも適応があります。ビソルボンの適応症である「手術後の去痰」をカバーする面でアンブロキソールは特に検討価値があります。徐放剤(ムコソルバンLカプセル45mg相当の後発品)もあり、朝方に痰症状が強い患者への対応として有利です。


薬剤名 分類 特に有効な場面 副鼻腔炎・中耳炎
ブロムヘキシン塩酸塩錠(後発品) 気道粘液溶解薬 硬くて粘稠度の高い痰 △(非推奨)
カルボシステイン(ムコダインなど) 気道粘液修復薬 痰の量が多い・副鼻腔炎合併
アンブロキソール(ムコソルバンなど) 気道粘液潤滑薬 術後・COPD・痰の性状問わず


ブロムヘキシンは「粘性の低い痰に使うと逆に排出が困難になる」という特性があります。代替薬への変更では、患者の痰の性状・合併症・既往歴を確認してからの対応が必須です。意外ですね。


参考リンク(カルボシステイン・アンブロキソール・ブロムヘキシンの3薬を医師の視点で詳細に比較している)。
去痰薬(ムコダイン・ムコソルバン・ビソルボン)の違いのまとめ |一之江駅前ひまわり医院


ビソルボン錠販売中止で注意が必要な注射・吸入剤の代替対応

錠剤だけでなく、ビソルボン注4mgとビソルボン吸入液0.2%の販売中止も医療現場への影響が大きい部分です。特に注射剤については重要な点があります。


痛いですね。


ビソルボン注4mgの代替品について


気道粘液溶解剤の注射剤は、ブロムヘキシン以外に選択肢が事実上ありません。後発品として「ブロムヘキシン塩酸塩注射液4mg『タイヨー』(武田テバファーマ)」が流通していますが、一つのメーカーに依存している状況は供給リスクという観点で懸念が残ります。手術前後に注射剤でのブロムヘキシンを使用している施設では、この後発品の在庫管理と代替プロトコルの整備が急務です。


ビソルボン吸入液0.2%の代替品について


吸入剤については、同成分の後発品「ブロムヘキシン塩酸塩吸入液0.2%『タイヨー』」が存在します。また、異なる有効成分の吸入去痰薬として「アセチルシステイン(ムコフィリン吸入液20%)」があります。ムコフィリンはアセチルシステインを有効成分とし、気道のジスルフィド結合を切断することで粘液の粘稠度を低下させます。ビソルボン吸入液を使用していた患者への切り替えでは、ネブライザーの使用方法や一回吸入量の違いについて事前に確認することが求められます。


一部の施設では、院内製剤として調製したブロムヘキシン塩酸塩吸入液を使用していましたが、品質管理上の課題(7日以内の使用期限、微生物汚染リスク)があるため、公式な後発品への移行が安全です。


  • 💉 ビソルボン注の代替:ブロムヘキシン塩酸塩注射液4mg「タイヨー」(武田テバファーマ)→ 同成分で注射剤としては唯一の後発品。在庫確保と発注量の管理を優先する。
  • 🌬️ ビソルボン吸入液の代替:ブロムヘキシン塩酸塩吸入液0.2%「タイヨー」(後発品)またはアセチルシステイン吸入液(ムコフィリン)→ 患者の状態・ネブライザー機種に応じて選択する。


参考リンク(ビソルボン注・吸入液の代替品情報と販売中止の詳細が整理されている)。
ビソルボン 吸入液・注 販売中止と代替品 |YG研究会


ビソルボン錠販売中止から医療従事者が学ぶべき「医薬品供給リスク管理」の独自視点

ビソルボンをめぐる一連の販売中止は、単なる「1品目の後継薬探し」では済まない、より深い構造的な問題を示しています。これは使えそうです。


後発医薬品の薬価は一般的に、収載後10年を超えると先発品の薬価の約30〜50%程度まで引き下げられます。ブロムヘキシン塩酸塩錠の薬価は5.30〜5.80円/錠という水準で、1日3回服用しても1日薬剤費は16〜18円程度です。これは製造・流通・品質管理のコストを考えると、現実的に採算が維持しにくい価格水準です。こうした「薬価が低すぎて誰も作りたくない薬」は今後も出続ける可能性があります。


これが条件です。


今回のビソルボン問題で起きた「先発品の販売中止と後発品の供給不安が同時発生する」というシナリオは、薬剤部が平時から備えるべきリスクシナリオの1つとして認識する必要があります。具体的には以下のような対策が現実的です。


  • 🗂️ 採用薬の「供給リスクスコア」を定期的に評価する:薬価水準・製造メーカー数・代替品の有無という3指標でスコアリングし、リスクの高い薬剤に対して事前に代替プロトコルを整備しておく。
  • 📊 DSJPや厚生労働省の出荷調整情報を週次でモニタリング:問題が表面化してから動くのではなく、出荷調整の兆候段階で対応を開始することが患者への影響を最小化する。
  • 🔄 処方医との事前合意を文書化:「この薬が入手困難になった場合は○○に変更する」という代替プロトコルを、主治医・処方医とあらかじめ合意し、薬剤部内に記録しておく。
  • 📦 最低30日分の安全在庫を設定する:供給不安の兆候が出た段階で30日分の在庫を確保できる発注タイミングのルール化が望ましい。10錠×10シート(100錠1パック単位)での管理が一般的。


日本では後発医薬品の使用促進政策が続く一方、メーカーの集約・撤退・供給問題が慢性化しています。2021年の日医工問題を契機に、業界全体でジェネリック医薬品の安定供給体制の見直しが進んでいますが、個々の医療機関・薬局での対応力を高めることが不可欠です。


ビソルボン錠の販売中止は、「知らずに対応が遅れた施設」と「事前に情報を収集して代替プロトコルを整備していた施設」で、患者への影響に大きな差が生じました。医薬品情報の収集と共有は、薬剤師・医師・医療機関全体としての継続的な責務です。これが基本です。


参考リンク(岐阜薬科大学附属薬局による、日医工問題とビソルボン錠販売中止が重なった時期の実際の対応事例が記載されている)。
「ビソルボン錠」の販売中止に伴う対応について |岐阜薬科大学附属薬局 薬剤部






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