実はForm AJがあっても、税関の検認で原産性が否認され、追徴課税になるケースがあります。

AJCEP(日・ASEAN包括的経済連携協定)は、日本とASEAN加盟10か国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)が締結した多国間EPAです 。2008年12月1日に日本・シンガポール・ラオス・ベトナム・ミャンマーの5か国で最初に発効し、その後各国で順次発効しました 。 global-scm(https://global-scm.com/blog/?p=6552)
AJCEP formとは、この協定に基づく特恵関税を享受するために必要なCertificate of Origin Form AJのことを指します 。英語で作成される1枚の書類であり、輸出者・輸入者情報、HS番号、原産地基準などを記載します。つまり「Form AJ」がなければ、AJCEP税率での輸入申告は原則できません。 global-scm(https://global-scm.com/blog/?p=6552)
重要なのは、AJCEPはあくまで第三者証明制度であるという点です 。CPTPPや日EU・EPAのような自己申告制とは根本的に異なります。「EPAだから輸出者の宣言で済む」という認識は誤りで、必ず権限ある発給機関(日本では日本商工会議所)を通じてForm AJを取得する必要があります。これは通関業従事者として必ず押さえておくべき前提です。 global-scm(https://global-scm.com/blog/?p=6552)
2023年3月1日には、品目別原産地規則(PSR)を定める附属書2がHS2002基準からHS2017基準へ改正され、現在はHS2017基準のPSRが適用されています 。HS2002のままで申請を続けた場合、受付は2023年2月で終了しているため注意が必要です。 global-scm(https://global-scm.com/blog/?p=6552)
Form AJには13の記載欄(Box)があり、それぞれに規定された情報を正確に入力する必要があります 。以下が主要な記載事項です。 hieuluat(https://hieuluat.vn/xuat-nhap-khau/cong-van-10265-tchq-gsql-tong-cuc-hai-quan-15b22.html)
| Box番号 | 記載内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| Box 1 | 輸出者の名称・住所・国名 | 発給申請者と一致させる |
| Box 2 | 輸入者・荷受人の名称・住所・国名 | 第三国インボイスの場合は記載方法が変わる |
| Box 3 | 輸送手段・経路・船名・荷卸港 | 直接積送要件の確認に直結する |
| Box 7 | HS番号・品名・数量 | 輸入国の現行HSで記載(HS2017基準) |
| Box 8 | 原産地基準(WO/RVC/CTH/SP等) | PSRを満たした基準のみ選択可 |
| Box 9 | 重量または数量・FOB価額 | RVC基準使用時のみFOB価額を記載 |
| Box 10 | インボイス番号・日付 | 輸入国への輸入インボイスを記載 |
| Box 13 | 第三国インボイス・遡及発給等のチェック欄 | 該当する場合は必ずチェック |
Box 8に記載する原産地基準の選択が実務上最も重要です 。品目に応じてWO(完全生産品)、RVC(域内原産割合40%以上)、CTH(HS4桁変更)、CTSH(HS6桁変更)、SP(特定加工工程)から選びますが、PSRが設定されている品目はPSRが優先されます。一般規則のRVC・CTHのどちらかを選べると思い込んでいると、PSR適用品目で否認される可能性があります。 global-scm(https://global-scm.com/blog/?p=6552)
Box 9のFOB価額について。2014年10月1日の書式改正で、RVC基準を使用する場合を除いてFOB価額の記載は原則不要となりました 。ただし、カンボジアとミャンマーには2年間の移行期間が設けられた経緯があります。現在は原則としてRVC基準使用時のみFOB価額を記載する運用が定着しています。なお、Box 9に"net weight"の記載があっても受け付けることで合意されています 。 mofa.go(https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ep/page22_001081.html)
日本からASEAN向けに輸出する場合、Form AJの発給は日本商工会議所(指定発給機関)に申請します 。全国21か所の事務所に申請窓口があり、原則として船積み前に申請を完了させるのが基本です。 jcci.or(https://www.jcci.or.jp/gensanchi/asean_faq.pdf)
取得の流れは以下の通りです。
1. HSコードの確定:輸入国の現行HS(2017年基準)で品番を確定する
2. PSRの確認:附属書2を参照し、PSRがあればPSR優先、なければ一般規則(RVC40%またはCTH)を確認
3. 原産性判定:BOM(部品表)・原価表・製造工程表を用意し、原産地基準を満たすか判定
4. 発給申請:日本商工会議所に所定の申請書類とともに申請
5. 証明書受領:発給後、Form AJを輸入者に送付
船積みに間に合わなかった場合は、遡及発給(ISSUED RETROACTIVELY)が利用できます 。船積みから12か月以内であれば申請可能で、その際はBox 3に船積日を記載し、Box 13の"ISSUED RETROACTIVELY"をチェックします。ただし、ASEAN一部の国では輸入通関後の遡及発給証明書を使った関税還付が認められないケースがあるため、あらかじめ輸入国側の税関に確認しておくことを強くすすめします。 jcci.or(https://www.jcci.or.jp/gensanchi/asean_faq.pdf)
Form AJの有効期間は発給日から1年間です 。有効期限切れのForm AJで特恵申告をしても受理されません。 global-scm(https://global-scm.com/blog/?p=6552)
参考リンク(日本商工会議所の発給手続きの詳細)。
日アセアン包括的経済連携(AJCEP)協定FAQ(日本商工会議所)
通関実務の現場でよく見られる誤解を整理します。正確に理解しておくと、余分な追徴リスクを避けられます。
誤解①:「Form AJがあれば無条件で特恵税率が受けられる」
Form AJは特恵適用の入口に過ぎません 。輸入国税関から検認が入った場合、BOM・原価表・製造工程表・材料仕入証憑などの書類で原産性を証明できなければ、特恵が否認され追徴課税になります。書類の保存期間はCO発給後3年間が原則です 。これは形式的な要件ではなく、検認対応の核心部分です。 global-scm(https://global-scm.com/blog/?p=6552)
誤解②:「第三国を経由したら直接積送違反になる」
第三国を経由しても、積替え・一時蔵置・荷卸し・再積込み・保存作業等に限定されていれば原産資格は失われません 。ただし、通し船荷証券(Through B/L)のコピーや、第三国において実質的加工がなかったことを示す書類の提出を輸入国税関から求められる可能性があります。経由する場合は事前に書類を準備しておくのが安全です。 jcci.or(https://www.jcci.or.jp/gensanchi/asean_faq.pdf)
誤解③:「AJCEP form=ASEAN全仕向でPDF発給可能」
AJCEPのPDF(e-CO)対応は2026年時点でマレーシア仕向(2023年7月〜)とベトナム仕向(2023年9月〜)のみです 。それ以外のASEAN仕向は紙の原本発給が必要です。対応仕向地を混同すると現地での輸入申告に支障をきたします。これは現場で意外に気づかれていないポイントです。 global-scm(https://global-scm.com/blog/?p=6552)
参考リンク(税関によるAJCEP原産地証明手続きの整理)。
日ASEAN包括的経済連携協定 原産地規則の概要(財務省税関)
通関業従事者として、単に「AJCEPが使えるか」を確認するだけでは不十分です。「AJCEPが最も有利か」を比較することが実務の本質です 。 global-scm(https://global-scm.com/blog/?p=6552)
同じASEAN加盟国との取引でも、日本とその国の二国間EPA、RCEP、AJCEPで税率・PSR・証明制度がそれぞれ異なります。以下の視点で比較することをすすめします。
- 📊 税率比較:AJCEP税率 vs MFN税率 vs 二国間EPA税率 vs RCEP税率を輸入国・HSコード・輸入日で固定して確認
- 📋 PSRの難易度:AJCEPのPSRよりRCEPのPSRの方が満たしやすい場合がある
- 🔄 累積の範囲:AJCEPの累積は日本・ASEAN当事国の原産材料に限定される 。中国・韓国材料を多く使う製品はRCEPが有利になりえる jcci.or(https://www.jcci.or.jp/gensanchi/asean_faq.pdf)
- 💡 証明コスト:Form AJ取得(第三者証明)にかかる時間・費用と、自己申告制EPAのコストを比較する
AJCEPは「ASEAN向けの万能ツール」ではありません。インドネシアは国内手続遅延で2010年に条約上効力が発生したものの運用開始は2018年3月と8年のズレがあった経緯があり 、国別の発効状況の違いが実務に影響します。特に過去案件の見直しや関税還付を検討する際は、輸入国別の発効日を必ず確認してください。 global-scm(https://global-scm.com/blog/?p=6552)
また、繊維製品(HS第50〜63類)は、デミニマス規定(僅少の非原産材料の許容)が重量基準10%以下と設定されており 、他の品目とは基準が異なります。繊維貿易を扱う通関業従事者はこの点を特に注意してください。 jcci.or(https://www.jcci.or.jp/gensanchi/asean_faq.pdf)
参考リンク(JETRO によるAJCEP活用の最新実務ガイド)。
AJCEP(日・ASEAN包括的経済連携協定)実務ガイド|2026年4月版(global-scm.com)